新矢千里展「見える形/見えない形」

HAPPENINGText: Jeremie Cortial

新矢千里は、札幌在住のイラストレーター。普段は、雑誌や印刷物の仕事で、イラストレーターとして活動しているが、この展覧会は彼女にとって、気分転換に新しいことにチャレンジするいい機会であった。例えば、家具デザイナーの友達と一緒に制作した揺り椅子や、大判出力のポスター、彫刻やインスタレーションなど、いろいろな実験を試みてみた。また、この展覧会用にグッズとTシャツも制作。約1ケ月間に渡り、「SOSO CAFE」でこの作品を楽しむことができた。

彼女の作品からは、自由な気持ちで、イメージのパターンを探し、遊ぶように楽しむことができる。日本の森にインスピレーションを受けたベクターの森で、生態系のように動物相などが生きている。シンプルな明暗で描いた景色は、広く穏やかな場所なのに、時には逸話的なものが邪魔する。不思議な発見か、悲劇的な出会いが想像力をかき立てる。どうしても、イメージのパターンとパターンの間に、その答えを見つけだしたくなるのだ。

彼女は、人の想像を一番大切に考えている。そのために私達の会話の背景になることができるイメージを作っているのだ。木の形と木の間の形や、意外な物の形や、不思議なキャラクター達は、際限なく質問と答えを繰り返す。絵の構図は夢の世界に連れて行いってくれる錬金術なのだ。彼女は、作品を見て想像している人の話しを楽しんでいるかのようだ。近年、コンピューターグラフィックが普及し、誰もが、自分の感じたことを簡単に表現することができるようになった。しかし、何かを作るのには、心が大事だ。

もともと彼女は、グラフィック・デザイナーを目指していたが、ある日、恩師のアドバイスで、本当の夢であったイラストに専念するようになった。子供の時を思い返してみると、ディック・ブルーナのキャラクター、ミッフィ-が大好きだったという。彼女にとってのアイコンだ。今は、イタリア人のデザイナー、ブルーノ・ムナーリや伊藤桂司など、いろいろなアーティストから影響を受けている。彼女はいつも、楽しく思えるようなデザインを作りたいと心掛けている。今企画しているプロジェクトは、友達が書いた話をもとに、絵本を作ることだ。

彼女にとって、自然は特別なテーマ。夜、絵を描いてる時に、ふと部屋から見える景色と夕焼けはとても素晴らしいそうだ。どうして自然に心を奪われているかと伺ってみると、森の平静について話してくれた。自然のバランスは強いと同時にはかない。森の木はとても古く、木の近くにいるとそれにふさわしい敬意を表したくなるという。多分あなたもどこかの街か公園にあるお気に入りの木や秘密の森があるかも知れない。まだなければ、見つけ欲しい。触って見て、何が起こるかを見てみよう。

新矢千里展「見える形/見えない形」
会期:2002年9月30日~10月25日
会場:SOSO CAFE(ソーソー・カフェ)
住所:札幌市中央区南1条西13丁目三誠ビル1F
TEL:011-280-2240

Text: Jeremie Cortial
Translation: Sachiko Kurashina
Photos: Jeremie Cortial

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