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Rプロジェクト

HAPPENINGText: Sachiko Kurashina

中庭に面した、かつて美容院だった空間を使った展示を行っていたのは、ニューヨーク在住の建築家ユニット「LOT/EK architecture (ローテック・アーキテクチャー)」。イタリアのナポリ出身のアダ・ト-ラとジョゼッペ・リニャーノがニューヨークでの活動を始めたのは90年代初頭。以来、大学のストゥーデント・パビリオンから、美術館、そしてショップまで、様々な建築デザインを、彼ら独自の飛び抜けたセンスとアイディアで行ってきた。その「LOT/EK」のジョゼッペもこのプロジェクトの会場である青山マンションに来ており、短いながらもお話を伺うことができた。

建築物の中に、コンテナやジャンボジェット機の機体を取り入れるなど、今までにない試みで私達を驚かせ、今もっとも注目されている建築家と言っても過言ではない「LOT/EK」。彼らのサイトでも過去のプロジェクトの進行状況が写真と共に紹介されており、コンテナがクレーンで釣り下げられて建物に収められていく様子を見ることができる。そんな奇抜な発想をする彼はどんな人だろう?と、やや緊張していたのだが、そこに現れたのは、清潔そうで常に笑顔を絶やさない優しい男性だった。

2年前にインディペンデント・キュレーターの原田幸子が、ロスアンゼルス訪問の際に偶然にも目にした彼らのビデオ展覧会を気に入り、今回のデザイナーズブロックの参加へとつながった。「LOT/EK」にとっては、彼らの作品を日本で発表するのは今回が初めて。「東京は刺激的でクレイジ-!すぐに大好きになったし、今後も日本で多くの人達に作品を見てもらいたい!」との抱負を語ってくれた。

また、今回の展示について尋ねると、それもまた思わぬ所からアイディアが生まれたとのこと。展示のコンセプトなどについて原田氏と会議室で話し合っている時に、その部屋の壁に、帯状になってポスターが貼られているのに着目。彼らの作品写真もそれを真似て貼ってみたところ、以外にも良かった、というのである。部屋をぐるっと一周することで、彼らの作品鑑賞の旅をするような感覚。高価な額や、特殊な照明などいらない。今そこにある条件だけで、新しい感覚を引き出す姿勢は「R-project」のそれと共通するものではないだろうか。

終始とても親切に作品の説明をしてくれたジョゼッペ・リニャーノ氏。「LOT/EKとは:ローカルな仕事の/遊びの場所と機能の再発明であり、普遍的な形状に対する問題提起であり、アート、建築、エンターテイメント、情報の境界をあいまいにする。」エネルギーに満ちあふれる彼からは、まさにこの定義がひしひしと感じられた。

そのほか、マンション内では「コンテンポラリー・イスラエル・デザイン展」なども開催していた。意外にも色鮮やかでポップ、そして自由な作風の作品が多いのが目についた。イスラエルという国に余り知識がなく、失礼ながらも何となく私達よりも自由が少ない生活、というイメージがあったからか、星を彷佛とさせる動きがあるスチール棒と銀、プラスチックで制作されたラヴィヴ・リフシッツの照明や、折り畳むとひとつの四角柱になるヤコブ・カウフマンの椅子は新鮮なものとして感じられた。

キーワードである「R」的な動きが起きやすい状況をデザインするこの「R-project」。やはり昔からあるものを使い続けるのは、安心感があり、更にそれにアイディアを注ぎ込み内容を充実させることで、愛着心も高まり、その潜在的価値も増すのではないだろうか。最先端が常に一番いいとは限らない。既にあるものを最大限に活かすという姿勢には同感できたし、これからも「R的な人」「R的なデザイン」を多く目にする機会が増えればいいと、楽しみと期待感で満たされた気分になった。

Text: Sachiko Kurashina
Photos: Sachiko Kurashina

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