ニューヨーク ADC アワード 2002

HAPPENINGText: Rei Inamoto

グラフィックデザインや広告産業において、アートディレクションは、製品完成までの重要な役割を担っていることは確かだ。そしてかの有名なニューヨーク・アート・ディレクターズ・クラブ・アワードが今年も開催され、本年度の受賞者とアートディレクションのお祝が盛大に行われ、その作品が紹介された。6月6日、雨の夜のニューヨーク市での出来事である。

アート・ディレクターズ・クラブでは受賞者を広告、ニューメディア、写真、イラスト、そしてグラフィックデザイン部門から選ぶことになっている。アメリカの組織団体が主催、運営しているアワードでは、アメリカ国内のデザイン事務所や広告会社のエントリーがかなりの影響力を持っているのが現状だ。また、ドイツ、日本、その他の国々のエントリーもかなり手強い。

経済の低迷とニューヨーク市を襲った9月11日の大惨事もあり、作品の多くが無難なアプローチを展開しているように思われ、選ばれた作品のどれもが似通ったもののように見えた。しかしその中でも、私の興味をそそるような面白い作品が無かったわけではない。

グラフィックデザイン部門で賞を受賞した作品は、作品として最もインスパイアリングなものであり、その作品も実に多種多様であった。その作品は、金賞を受賞したたった一つのフレーズと、シンプルなイラストが描かれた3巻まであるシリーズ限定本「BUCH WHITE」や、デジタル・キッチンがテレビ番組用に制作したタイトルシークエンスの作品や、イマージナリー・フォーシーズが、制作したタイムズ・スクエアに隣接するビルの看板等、様々である。

ここで受賞者ではなく、あるクライアントに目を向けてみよう。そのクライアントは、デザイナーやアート・ディレクターが、彼等がベストな作品を制作できることを、頑に貫いている会社として有名である。そう、それこそナイキだ。広告部門とニュ−・メディア部門で金賞を受賞した作品は、どちらもナイキに関連したものであった。ポートランドのワィデン+ケネディは、昨年のナイキのキャンペーン用に制作したプリント広告で金賞を2つ受賞し、ニューヨークのR/GAは、ナイキ・イノベーション用に制作したウェブサイトで金賞を一つ受賞した。

しかし、広告部門では、シカゴのDDBが12個用意された金賞の内8つを受賞する結果となり、それによって、この部門が何かインスパイアというものにはかけ離れたもののようになってしまったのではないだろうか。

今年の終わりには、今回受賞した作品を集めた作品集が、アート・ディレクターズ・クラブから出版される予定だ。アート・ディレクションという現場の概要や、その現場で起こっていることを再確認できるものとなるだろう。

Art Director’s Club Annual Award 2002
会期:2002年6月6日
会場:The ADC Gallery
住所:250 Park Avenue South New York, NY 10003
TEL:+1 212 643 1440
https://www.adcny.org

Text: Rei Inamoto
Translation: Sachiko Kurashina
Photos: Rei Inamoto

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