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オブスキュア・テクニカル・ヴァミット

THINGSText: Jiro Ohashi

ヨーロッパなどでは「スクウォッティング」(=公有地に無断居住すること。または無断居住地)はよく見られる活動だという。アーティスト達が廃屋となった建物に勝手に住み着きアトリエにしたり、ギャラリーを作ったり、またそこに住み着いたり…。日本では、特に東京ではそうした活動はなかなか現実味がないけれど、一カ所かつてそれが維持された空間があった。東京大学駒場校の中にあった駒場寮と呼ばれた建物である。ここにはすでに学籍を持たないもの、アーティスト、バックパッカーなど様々な国籍の外国人たちもいたらしい。建物は取り壊されて今はないが、ここをスクウォットしていた一人に、オブスキュアというギャラリーをオーガナイズしていた長谷井宏紀がいたという。


段ボールのキューブに直接スタンプ印刷。タグが付けられ往年の郵便小包を思わせる。

彼が主宰するオブスキュア・テクニカル・ヴァミットが今回奇妙なCDをリリースした。かつてアートギャラリーとして活動し、現在は思い出したころ散発的にアートマガジンをリリースしているが、そのリリース内容はCDとのカップリングや、表紙に鉄板など特殊素材を使ったものなど、パッケージにも印刷にも隅々神経を注いだ少部数ハンドメイドのマルチプル的作品だった。

今回も所謂CDとは思えないキューブ型の段ボールに半球の地球が収まり、そのなかを開けるとディスクが収まっているというもの。既成のCDパッケージからするとまったくの別物だけれど、流通を離れたオブジェクトとして考えれば、当然これもアリなのだと思わせる新鮮さがある。


鉄板の上に半球。耳(のオブジェ)が地球を支えてる。なかを開けるとCDとなぜか枯葉が数枚。

内容は長谷井宏紀が監督し、オブスキュアがプロデュース参加した映画「W/O」(2月24日より渋谷ユーロスペースにてロードショー)に関連して宇川直宏/KUJUN/ウッドマン/関根正幸/藤乃家舞らが参加。映画とこのCDの関係は、単純なサウンドトラックではなく、別個に自立した印象も受ける。

OBSCURE TECHNICAL VOMIT
仕様:555個限定(ノーマルパッケージ 945枚)
発売:2001年1月末
入手先:都内のアートショップ、洋書店など(1月末現在)
https://www.obscure.gr.jp

Text: Jiro Ohashi

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