シネトリップ

HAPPENINGText: Judy Finn, Mark Griffith

ロビーでは、ビキニを着た20数名の人達がファンクのミックスに合わせてダンスを楽しむ。浴場内では、ベリーダンサー達がダンスを踊り、いつもは静かなスイミングプールが、ハンガリーの若者達で溢れかえる。2階のギャラリーでは、オーガナイザーであるラキ・ルーがモニターとプロジェクターの前に立ち、ビートに合わせてスイッチを操作する。70年代のフィルムから切り取ったオリンピックの砲丸投げの選手の70年代の映像がスイミングプールの上方に設置された巨大なスクリーンに映し出され、地元のDJが彼の隣でテクノミュージックをプレイする。その壁は、トルコ石とオレンジ色の光で、砕けたステンドグラスのようにも見える。

イベントは、ドレッドヘアの2人の発想で始まった。33歳のディレクター、ラキ・ルーと、彼の26歳のパートナー、エヴァ・ギャロス。1997年に友人達を集めるアウトドアイベントとして、このアイディアを思い付いた。そのアイディアを実現するためには、財政的なサポートが必要だった。見込みのないままブリティッシュ・カウンシルに話を持ちかけ、ついには現在シネトリップのマネージャーとなっているブリティッシュ・カウンシルのアートマネージャー、アンドレア・ガンスと提携を結ぶことに成功した。

シネトリップは、かなりの成功を収め、他の場所でも開催されるようになる。夏の間にフランス国内で開催されるコンテンポラリーアートのフェスティバルで、40のイベントを開催するという招待も受けた。今後は、オーストラリアでも開催される予定だ。

ブダペスト以外の地でどうやってシネトリップを開催することができるのかと、疑問に思う人もいるだろう。主要構成要素となる温水は、確保することができるのか? だが実際、ロンドンのバロック式のロイヤル・フェスティバル・ホールや、イタリア、トリノの中央広場、パリのセーヌ川に渡る橋でも、シネトリップが開催されている。そのコンセプトはシンプルで、一見ユースカルチャーには適さないような場所を選び、それをビジュアルとオーディオエフェクトを使って一変させてしまおうというもの。

現在、1942年にヒトラーが建てたボルドー地方のセメント潜水艦保有タンクや、パリの株式取引所でも開催が予定されている。

ハンガリーのパーティー文化は、パニック状態にある現代に本当の意味でのリラックスを提供すべく、過去の歴史の探求を続けている。

Rudas Fürdőben
住所:9 Döbrentei tér, Budapest 1013
TEL:+36 20 321 4568
https://www.rudasfurdo.hu

Text: Judy Finn, Mark Griffith
Translation: Mayumi Kaneko
Photos: Ryder Thornton

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
ラ・フェリス
MoMA STORE