ベイエリア・アワード・ショー 2000

HAPPENINGText: Kanya Niijima

今年で7年目を向かえるニュー・ラングトン・アーツ主催のアートショー、ベイエリア・アワード・ショー 2000が、この夏も開催される。サンフランシスコ・ベイエリアを中心にした、地元のクリエイター達をサポートするこの展覧会は、ビジュアルアート、ビデオ、文学、ミュージック、パフォーマンス等、幅広いジャンルをカバーすることで有名だ。

中でも今回紹介する「ネットワーク」は、インターネット上における実験的なアート作品にフォーカスをおいたプログラム。今年は、マサコ・オダカによるプロジェクト「ピニオン」とスティーブ・ハイズの「The Detritus Sound Concensus Bakery」が公開されている。

マサコ・オダカの作品「ピニオン」が生みだす体験は、サンプリングによる電子系音楽を制作する作業、あるいは、 DJミキサーで無数のトラックを混ぜあわせる過程に、非常に近い感覚を生みだしている。実のところ、このサイト自体は、サウンドを一切使用していないのだが、既成されたサウンド・マテルアルをベースにカット&ペーストし、新しい形態、概念をつくりあげるエレクトロニック・ミュージックの構成に似たプロセスをビジュアルだけで実現している。

ユーザーの参加をベースにしているこの作品のインターフェイスを使って、世界中に実在するウェブサイトを素材にし、ユーザーは各々の意図に沿った新しいデザインを作りあげることができる。元のオリジナルデザインは、そのHTMLを操作されることによって、本来意図された実用性を失い、新たなベクトルをもったリミックスとして生まれかわるのである。それらの「壊された」デザインは、サーバーによって、世界中に点在する無料ウェブサイトに自動的に転送され、半永久的に記録が残される。分裂/再構成を繰り返すことによって、まるでミューテーションしたウイルスのように増殖する過程を、ユーザーは、サーバーを通して観察できるのである。「PINION」という単語は、「飼い鳥を飛べないように翼の先を切る」という意味をもっている。壊れた鳥達は、静かに、しかし着実にネットの片隅で今でもその足跡を残し続けている。



一方、スティーブ・ハイズの「The Detritus Sound Concensus Bakery」は、ユーザー参加によるサウンド・コラボレーションを24時間ネット放送する作品。サイト上で音に関しての様々な質問に答える事により、ユーザー各々の好みがデータベースにインプットされる。サーバーは、それらのデータをアルゴリズムに従って計算し、多数のリスナーの意向に反映した、サウンドのコラージュをネットキャスティングする、といった具合である。これらのコラージュのベースは、ハイズがあらかじめセットした、様々な音のサンプリングファイルなのだが、ある意味で、無機質でドライな感触のするこれらのデジタルサンプルが、不特定多数の意思として、命を与えられ、一人歩きを始めるのは、ネットの中でのみ生き延びる、新たな精神集合体の兆候なのだろうか。

The Bay Area Award Show 2000
会期:2000年7月12日〜9月9日
会場:New Langton Arts
住所:1246 Folsom Street, San Francisco, CA 94103
TEL:+1 415 626 5416
http://www.newlangtonarts.org

Text: Kanya Niijima

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