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人狼

THINGSText: Shinichi Ishikawa

今回の夕張映画祭はアニメーションの出品が目立つ。「トイ・ストーリー2」(招待作品)というのは映画祭全体の目玉にひとつだと思うが、もうひとつの目玉は文句なしに「人狼」(ヤング・ファンタステック・グランプリ部門エントリー作品)だろう。1999年11月よりフランス先行ロードショーが公開され、1週間で約3万人を動員するヒットを記録し、海外の映画祭では数々の賞を受賞しているにもかかわらず、日本では初プレミア上映ということもあって、本州からかけつけた熱心なファンも多かったようだ。決して誰でも知っている(楽しめる)系統の作品ではないと思うが、上映場所も大型の会場がセレクトされていて、かつ満員であった。

そしてスタート。監督沖浦啓之の舞台挨拶。司会者らをまじえての監督の軽いトーク。シャイな感じの好青年といった雰囲気で、このような作品の作り手のクセのある感じはしない。もっとも「人狼」の脚本は押井守という大変クセのある作家であり、いったいどのように監督と脚本家として共同作業が行なわていたか、興味深い…。『いや、押井さんの脚本だからといって、そんなに理屈っぽい作品ではないですから』というコメントに会場に軽い笑い声があがる。さりげない発言だが、監督は私だという主張かな…と思っていたら本編が始まった。

凄い。結論から先にいうとおもしろかった。おもしろい、おもしろかった! 

劇中のセリフ『狼はおとぎ話では人間が全てを終わらせる。でも現実はそうではない』『俺達は狼の皮を被った人間じゃない。人間の皮をかぶった狼なんだ…』。押井守が作りだすストーリーはテロリスト・グループや、特殊部隊が繰り返し登場する。「パトレイバー」しかり「攻殻機動隊」しかりである。そんな、観ている僕達にまったくリアリティのないところで展開される物語に、どうして僕達はここまで引きつけれるのだろうか。

舞台は昭和30年代、戦争からようやく経済復興しつつある東京。過激な反政府活動をに対抗するために創設された強力な武力組織、通称「首都警」。主人公はその一員。ある日彼は任務遂行中テロリストのメンバーである少女の連絡員と遭遇する。彼女を殺すことは彼の任務。でも彼はトリガーを引くことができなかった…。その結果…。これ以上書いてしまうのはルール違反だと思うので内容について深くは触れられないが、いくつかのヒントを書いてみよう。ぜひ自分の目でたしかめて欲しい。

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