サージュ

PEOPLEText: Kyota Hamaya

透明度の深い湖をのぞき込む様な歌声。それが、サージュを聞いた時の第一印象だった。日本と北京を往復し作り上げた3枚目となるニューアルバムでは、マスターマインドをはじめとする日本のアンビエントの第一人者が参加している。
徹底した音楽スタイルが認められ映画「スプリガン」の主題歌に抜擢された。映画やサントラを通して聞いたことのある人も多いだろう。
彼女は中国人である。もちろん歌は中国語を使う。英語の次に多くの人が使う中国語だが、なかなか触れる機会がない。このアルバムを通し中国語の響きの美しさを感じて欲しい。

このアルバムで3枚目となりますが、今回のテーマにはどんなものが込めらていますか?

今回のアルバムは『生きる』というのがテーマです。それで曲を作りました。自分の気持ちは言葉ではなく、音楽を通して会話したいという気持ちでいっぱいです。例えば、車を運転してても、夜寝る前でも、私とは関係なくどこでも聞こえる、聞ける音楽を作りたかったんです。今回が一番納得できました。

中国語で歌うということについては、強い意味があるのですか?

ありますね。北京語の曲のノリの美しさでいっぱいの人に伝えたい。例えばスプリガンの主題歌も最初大友さんは、「言葉はどっちでもいいから一番自分が表現しやすい言葉でいい」と言われたんです。日本の方は日本語が一番いいんだろうけど、自分がわざわざ下手な言葉を使って、歌う表現はちょっと違うんですよ。自分が一番表現しやすい言葉を使うのが一番気持ちいいんじゃないか。だから変に自分が上手く使えないのに英語を使うとか、また日本語もそうだし(そういうことは)あんまりしたくない。
日本の歌手、もちろん悪いことではないけど、みんな、歌の中に英語がいっぱい入っていますね。もちろん自分の曲の中にももちろん英語は入るんだけど、自分の気持ちは自分がほんとに表現できる言葉で歌いたいです。

歌との出会いというのはいつ頃だったのですか?

一番最初の舞台に立ったのは、5歳の時です。子供の頃。まだ小学生になってない頃で、たまたま学校でオーディションがあって、お姉さんに付いていったんです。みんなダンスばっかりで学校の先生が「あなたの妹、一曲歌ったらどうですか」って。で、一曲歌って私だけオーディションOKになって、お姉さん達はダンスでだめになって。その後、7歳の時中国の建国記念日で舞台に出たとか。今考えるとあの頃が私の歌の人生の始まりなんじゃないかなぁって思います。

その頃はどんな歌を歌っていたのですか?

子供の頃はチベットの音楽が好きでした。今もですが。ある日友達の家でチベットのレコードを聞いて。実はこの曲誰でも知っている曲だけど、チベットの言葉で歌っていて全然雰囲気違うから、もうすごくはまっちゃって。で、まねをする。言葉は分かんないけど、同じ発音みたいな言葉で歌ってて、コンサートに出るときもチベットの民謡です。私は1コーラスはチベットの言葉で、2コーラス目は北京語で歌っていた。また中学生の頃とかも舞台出るときは全部チベットの歌です。北京の人はけっこうみんな私のことを北京の人じゃなくてチベットの人と思っている人が多いんです。自分がチベットの音楽がすごく好きで、神秘性高っくって、向こうの文学に関係ありますね。自分に関しては音楽の聖地と言えるぐらいの気持ちがすごい強いです。アルバムの中にチベットの音楽が色々入っているんですよ。新しいアレンジをして、今回のアルバムの5曲目も子供の声とか全部チベットの子供が歌っている。

どういう経緯で来日したのですか?

チベットの歌が好きで、これでなんか新しいものつくれないかなってとか考えてた。自分が本当になにが一番やりたいのかずーと考えてたんですが、新しい音楽作りたいっていう気持ちが強くって、じゃあどういう音楽かというのが自分でもはっきりわかんないですよ。
私はアジアの人ですから、アジアの中で日本が一番流行の先端を走っていると思います。日本の音楽の制作もアジアで一流ですよね。だから音楽の情報もいっぱい入ってくるし。じゃ、とりあえず行ってみようかなっていう気持ちで日本に来たんです。

それは何年頃のことですか?

’91年。で、もちろんあの頃は上手くできなくて、また国に帰って。でも私、日本で色々勉強になったんですね。例えばエニグマとか知ったし。初めてエニグマ聞いた時にすごい泣いちゃって、私こういう音楽がやりたかったんじゃないかな。あれはチベットの音楽みたいなものが沢山入っているんですよ。
その後やっとコロムビアでデビューしましたけど、たどり着くまでけっこう大変でした。この一年半の時間で自分の人生の中で一番充実していると思っています。今回のアルバムにも「スプリガン」の曲も入っているし、今、大友さんの大ファンになってるし、日本のアニメの成果というのが初めてわかった。で、私も彼の映画に参加できてとても光栄って思ってます。

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