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マルク・シャガール 版にしるした光の詩(うた)

HAPPENINGText: Alma Reyes

1927年にヴォラールに依頼された版画集「サーカス」(1967年刊)もシャガールの代表作の一つ。シャガールは子供の頃からサーカスに興味を抱いていた。『わたしにとって、サーカスは、小さな世界のように過ぎ行き、溶けていく魔術的な見世物である。騒がしいサーカスがあり、隠れた深さをもつサーカスがある』と述べている。彼は、1967年までに23点のカラーと15点のモノクロのリトグラフを完成させ(展示されたのはカラー23点)、サーカスの舞台の荒々しい伏魔殿ふくまでんを完璧に表現した。


マルク・シャガール「自転車乗りたち」(左);「花束を持つ娘」(右)版画集「サーカス」1967年刊より

雪のような体で大きな花束を抱えた女性が、花の上の白い鳥と下の黄色い獣を引き立てている「花束を持つ娘」。この絵は、動物と人物の典型的なハイブリッド構図で、すべてが豊かなセルリアンブルーの背景に浸っている。「自転車乗りたち」では、シャガールは4人のアクロバット芸人たちを陽気な才能のスペクタクルに仕立て上げている。ピンクの自転車乗りと彼の後ろにいる赤の男が、緑の他の2人のパフォーマーと対立している。


マルク・シャガール版画集「ポエム」1967年刊より

シャガールはしばしば、“画家の翼を持つ詩人” というレッテルを貼られた。1968年に出版された「ポエム」コレクションは、1909年から1965年の間に画家が書いた31篇の詩と24点の木版画(15点が展示されている)で構成されている。詩には、故郷の思い出、ユダヤ人や愛する人への思い、信仰、戦争、画家としての道などが綴られている。ヴィテブスクとパリ、恋人たち、花束、旧約聖書の物語などのイメージが、木目や年輪を強調する木版画の技法と、画面に貼り付けられた模様の布や紙片のコラージュによって描かれている。


展示風景

『しもべである私に
ままならぬこの世で
主はこの務めを与えたもうた
絵の具と筆で
どうあなたを描けばよいのか
(中略)
命を与えるあの方のもとへ
我らに死を与えたもうあの方のもとへ
このような時こそ
私の絵は輝き始める』
– マルク・シャガール版画集「ポエム」、「私に与えたもうたこの務め」より

きらびやかな色彩、踊る人物、愛、苦難、内省的な瞬間など、生き生きとした風景で満たされたギャラリーを歩いていると、現実と作り話の狭間にいるような、シャガールの多次元的な想像力の世界に入り込んでしまう。

マルク・シャガール 版にしるした光のうた
神奈川県立近代美術館コレクションから
会期:2023年7月1日(土)~8月27日(日)
開館時間:10:00~18:00(入場は17:30まで)
休館日:月曜日(※7月17日(月・祝)は開館)、7月18日(火)
会場:世田谷美術館 1階展示室
住所:東京都世田谷区砧公園1-2
TEL:03-3415-6011
https://www.setagayaartmuseum.or.jp

Text: Alma Reyes
Translation: Saya Regalado
Photos: Alma Reyes

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