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MUTEK.JP 2018

HAPPENINGText: Aya Ono


Noesis – Synichi Yamamoto + Seiichi Sega & Intercity-Express JP © MUTEK Japan

「MUTEK.JP」の人気プログラムであるドームシアターでは、ローカル・インターナショナルのクリエイター達による多彩なオーディオビジュアル作品の数々を大型球体スクリーンで3D鑑賞ができる。その中の一つ、メディアアーティスト・山本信一と音楽家・大野哲二(Intercity-Express)によるオーディオビジュアル作品「Noesis」はアートの視点で自然や宇宙の法則性などにアプローチし、空間的に構築した映像を、デバイスにあわせて切り出して行き「無に包まれる」「時間の堆積」「地球の中からの風景」などのテーマで新しい視点を体感できる30分の作品となっている。海・氷河・砂漠のような人工物が存在しない地球の原風景や、稲妻のように現れるラインが葉脈のようにスクリーン全体に広がっていったり、無数のドットが雨のように上から降ってくるような映像だったりと迫力のある没入感を得られる。


HOMOLOGY – Akira Wakita © MUTEK Japan

ドームシアターの出口のスペースには、「MUTEK.JP 2017」でのライブパフォーマンスが大きな話題となった、慶応義塾大学環境情報学部教授でアーティスト・サイエンティストの脇田玲が、パナソニックアプライアンス社「ゲームチェンジャー・カタパルト」が事業化に向けて開発中の住空間ディスプレイ「AMP -Ambient MediaPlayer-」を使用したデジタルインスタレーション「HOMOLOGY」が展示され、作品を至近距離でじっくりと見られる。「ホモロジー」もしくは「同相性」とは、数学や生物学で用いられる専門用語であり、対象間の構造的、機能的、形態的類似性を意味する。哺乳類を例にすれば、人間であれ牛であれ猫であれ、頭や胴体や手足は同じ位相として接続しているし、内部構造に着目すれば、同様の機能を有する骨や筋肉が存在する。この概念をより広い視点から再解釈し、同相性をビジュアライゼーションとシミュレーションを通して、感得可能な状態に変換することがどの程度まで可能であるかを探った本作品。「MUTEK.JP」ならではの真っ暗な未来館という、いつもとは違う異空間で一際存在感を放っていたインスタレーションだった。


NO-ON – konel © MUTEK Japan

脳波に応じて音を瞬時に生み出す、NO-ON(脳波による内発音楽表現)は、欧米、東南アジア、日本のエンジニア、デザイナー、プロデューサー、ディレクター、音楽家など分野をまたいだクリエイターが所属する技能集団「konel」のインタラクティブアート。言葉で表現しきれない感情、たとえば、いつもと変わらないはずの夕日に突然心奪われ、哀愁という言葉だけでは感情につり合わず、適切な表現が見当たらない。そんな時、脳波をつかって内発的に音楽を生み出せたらどうなるか。自身の感情と向き合い、他人とも共有できる表現が手に入ると何が起こるのか。というコンセプトを基に開発された脳波作曲装置。3枚のスクリーンに囲まれた椅子に座り脳波計を装着する。映し出させれる映像による視覚刺激によって生じる6種類の脳波と集中状態、瞑想状態のパラメーターに応じて音楽が作り出される仕組みになっている。


lights / sounds – toe on net © MUTEK Japan

作品やプログラムだけでなく、エントランスや階段の傍、フロアの踊り場など隅々に設置されたライティングアートの存在も印象的で、会場に訪れた人を「これから何が始まるのだろう」「どんな体験が待っているのだろう」と、高揚感を掻き立てる役目を果たしていた。数々の音楽フェスティバルや、コンテンポラリーアートの展覧会を見てきたが、「MUTEK.JP」は何にも該当しない、突出した独自性を持ったイベントだということを実感した。科学未来館という会場だからこそ、ナイトクラブでもアートの展覧会でもない独特な非日常空間の「MUTEK.JP」を実現できたのだと感じる。三度東京での開催を経て、今後も新しい挑戦を続け、更に進化・変化をしていくであろう。そしてこの先、日本独特の文化とどのように交わっていくのか、「MUTEK.JP」からますます目が離せない。

MUTEK.JP 2018
会期:2018年11月1日(木)〜4日(日)
会場:日本科学未来館、渋谷 WWW / WWW X、代官山 UNIT
https://mutek.jp

Text: Aya Ono
Photos: © MUTEK Japan

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