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ホイットニー美術館

PLACEText: Yuji Shinfuku

ホイットニー美術館はとりわけアメリカのアートに重きを置いている事で知られる。エドワード・ホッパーの多くのコレクションを持ち、移転前最後となる大規模な展覧会はアメリカのポップアートの巨匠ジェフ・クーンズであった。創設者ガートルード・ヴァンダービルト・ホイットニーは1920年代に、500点以上のアメリカ美術の作品を収集していた。このコレクションをメトロポリタン美術館に寄贈しようとしたが、当時アメリカ美術はほとんど認められておらず断られた為、1931年に自らの美術館を設立したのがホイットニー美術館の始まりとなる。以降、ホイットニー美術館はアメリカのアートの歴史を体現してきた。多くのアメリカの芸術家と強い繋がりを持ち、共に時代を生きてきたと言っていいだろう。

前述したロバート・スミッソンもその例外ではなく、美術館と密接な繋がりを持ち、今回の移転建築におけるコンセプトの中核を成しているとも言える。ユタ州ソルトレイク市にある幅およそ4.5mの土手で作られた渦巻き状の湖岸から突き出した作品「スパイラル・ジェッティ」で知られる彼の「フローティング・アイランド」という(1970年に実現しなかった)企画を、ホイットニー美術館は彼の2005年の回顧展で具体化させた。この作品は27mx9mの人口島をタグボートにひかせて2週間ハドソン川を遊泳させるもので、セントラルパークの設計者フレデリック・ロー・オルムステッドへのオマージュ作品となっている。

また、今回の移転に際しては、ファションの分野でも呼応する動きがあるようだ。オープニング・パーティーのスポンサーを務めるファッションブランドのマックスマーラは、2015 プレフォール・コレクションにてホイットニー美術館へのオマージュを展開している。現在のパーク・アヴェニューにある段々に迫り出した外観にインスパイアされた服など、ある種のコラボレーションともいえるコレクションだ。建築家レンゾ・ピアノが美術家のロバート・スミッソンに着想を得てハイラインの新しい建物を設計しているように、ホイットニー美術館が一つの思想、アイディアとして、ファッションや建造物と結びつき、そこに美術館の哲学が反映されているように感じる。移転に伴って長い歴史を持つホイットニー美術館の在り方がまさに体現されていると言えるだろう。

WM002.jpgPhoto: Timothy SchenckPhoto: Timothy SchenckPhoto: Timothy Schenck
The building viewed from the roof of the Standard, July 2014

公式ホームページではウェブカメラによる15分毎の工事進行を見る事ができる。ニューヨークの新しい一面を見せてくれる再開発エリア、ハイラインへと移転する事になったホイットニー美術館。新館は5月1日にグランドオープン予定で、パーマネント・コレクションの大規模な展示になるようである。新しい美術館の展示を楽しみ、ハイラインの脇を流れるハドソン川の風を感じながら、歴史を内包しながらも変わり続けるニューヨーク、そして変わりゆくアメリカに思いを馳せてみるのもいいのではないだろうか。

Whitney Museum of American Art
住所:99 Gansevoort Street, New York, NY 10014
営業時間:11:00~18:00(金曜日13:00~21:00)
休館:月・火曜日
入館料:18$
TEL:+1-212-570-3600
https://whitney.org

Text: Yuji Shinfuku
Photos: Timothy Schenck

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