ギャラリー・スタインスランド・ベルリナー
PLACEText: Victor Moreno
若いアーティストたちがいつも最初に苦労するのは、個展を開く前にまず世間での認知を得ることである。名前が知られるようになるためには数年はかかる。ようやく認められて個展が開けるようになると今度は、見合った展示会場を探し、そこに受託された作品を整えなくてはいけない。その後はプレスに知ってもらうための準備である。もちろんどこで暮らして活動するかにもよる。都市の大きさとチャンスの多さのバランスなのである。ひとつの街にどれくらいの人数の優れたアーティストが住んでいるのかは把握し切れないものだが、スカンジナビア地方がその意味でとてもよい環境であることは確かだ。アーティストに豊富なチャンスが開かれている。しかしそうは言ってもやはり重要な展覧会で出品するという高い目標に到達するのは誰にとっても容易ではない。
ギャラリー・スタインスランド・ベルリナー(GSB)はそんな中においてストックホルムのアーティストにとって素晴らしい場所である。若いアーティストへの理解がある上、このギャラリーの展覧会初日はどれも非常に認知度が高いのだ。多くの観客が訪れる楽しいオープニングが約束される。
このギャラリーは、ジーネッテ・スタインスランドとジャコブ・ベルリナーによって運営されている。彼らが注目するのは、ストリートカルチャーやそれに繋がる文化に関わる若い現代美術だ。展覧会の他に、厳選された美術誌や書籍の販売、ストリートアートのガイドツアーなども行っている。過去の展示には、、フィンスタ、ティモ・ヴァイティネン、 ジャコブ・ボエスコブ、ナディン・バーン、リサ・ジョナソン、 ダニロ・スタンコヴィック、クノータンほか様々な作家が名を連ねる。
ジーネッテはノルウェー出身、ジャコブはデンマーク出身ですが、なぜギャラリーをストックホルムにオープンしたのですか?
ジーネッテはこの街にパートナーと子供と一緒に住んでいましたし、ジャコブはストックホルムで働きはじめて数年目になっていました。私たちはスウェーデンには何かが足りないという同じ意見を持っていました。それは優れたアーティストと多くのファンに溢れ、芸術と音楽とビールを楽しめる素敵なギャラリーだったのです。
このギャラリーでは、スカンジナビアのアーティストだけを紹介するのですか?
そんなことはありません。ただ私たちは、優れた芸術が生まれるのはアメリカからだけではないことを示したいのです。この街にとって新しいと感じたものならどこの国の作品でも展示します。
ストックホルムは若手現代美術家にあまり可能性が与えられない街だという声がありますが、それについてどう思いますか?
この街は若いアーティストにとってよい場所だと思います。ギャラリーも多いし人々の関心も高い。ただ大きな問題はメディアです。彼らは現代美術にはあまり興味を示さず、とても保守的で「安全」なアートにばかりフォーカスします。
現在のストックホルムの現代美術界について、良い点と悪い点を教えてください。
良い点は、この街には弾けるように新鮮で新しい作品が沢山あることです。しかし大都市と比べるとストックホルムは田舎です。畑の土のかわりにコンクリートがある大きな村のようなところなのです。
ストックホルムはスカンジナビア諸国を繋ぐハブのような存在として、若いアーティストを国外に紹介する拠点になれると思いますか?
できるとも言えるし、できないとも言えます。コペンハーゲンとストックホルムは現在そのように繋がっています。でも分かって頂きたいのは、スカンジナビアから世界に通用するたった一人のアーティストを見つけるのはとても難しいということです
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