ツァオ・ヤン(EXIT A)

PEOPLEText: Ralph Yuu

電子音楽について私の得た印象は、科学技術で生み出されたこのいくつかの衝撃に満ちたメロディーの中、それを聴く人全てが曲のトーンの変化に合わせて意識や感情が瞬く間に極地に達するというものです。音楽活動に従事するあなたは、このメロディーと表現すべき感情である自己との関係をどのようにお考えですか?また、創作するにあたりこのメロディーをどう扱っているのですか?

厳密に言えば、機材を用いて音楽をつくろうとすれば自然と電子的な音になるよ。君がよく知っているエフェクターやベースギターアンプでさえも全て電子音楽なんだ。僕らが話し合うべきなのは、いわゆる“エレクトロミュージック”であるべきなんだ。だけど実際エレクトロミュージックといっても、多くの種類に分かれる。多くの機材の助けを借りる必要がある。ハードでもいいし、ソフトでもいい。壊れたプレーヤーにカセットテープを入れてもバリバリ音を立てるノイズっていう“エレクトロミュージック”がつくれるし。今のところ僕が実際にバンドの中で電子的な要素を使うことは少ない。やはり条件や制限を受けるから。例えば機材、これにはいつも頭を悩まされる。コンピューターを使って電子的な部分を完成させられる。でもライブの時なんかは過度にコンピューターや他のハードウェアに頼ることはしたくないんだ。その上僕はロックの表現方法が好きだから、選択をしてバンドのメンバーに沢山出番をつくる。付け加えると、たとえ小さなイベントホールだったとしても、演奏を完璧にこなす事ができないほど機材のセッティングは僕たちを疲れさせてしまうだろうから。それでも曲にもっと面白みをもたせる方法は知ってるよ。頃合いを見計らって、僕らは全ての曲をおさめたリミックスアルバムをリリースするんだけど、曲はエレクトロミュージックばかりになるだろね。

メロディーに関して、僕個人は気持ちよく聴こえるような深い曲作りを心がけているよ。だからって、耐えきれないほど通俗的な音楽を作るつもりはないんだ。言い換えれば、メロディーラインを聴いているときに、もう次にどういうメロディーになるか分かってしまうようなものとか、あるいはずっと同じ音を繰り返しているだけの曲とかにね。最近はそういった曲があまりに多いんだ。でも本当に作詞をするのは簡単になったよ。ここ数年のポップスを聴いている人を通りから連れて来て、新聞を渡して書かせてみたら適当に鼻歌を歌って作詞できると思うよ。“作詞家”って呼ばれている多くの人が、実はこんな風にペテン師だったりするんだ。僕としてはこんなのは「作詞」じゃなくて、北京の方言の「チートゥ」(オウム返し)って言葉にぴったりだと思うけどね。付け加えるとメロディーは音楽の一部でしかないから、最も重要な部分である必要はないんだ。音楽作品の言語からすると、リズムやトーンそれに演奏者の感情表現の全てがともに重要なんだよ。

p290882743.jpg

音楽は芸術の一つだと考えられています。そして、芸術的な言語を通して、作曲家の経験や記憶を描いたり感情や考えを表現したりします。実のところこれは視覚芸術と似通っています。作曲家として自身の体験や感情が、曲作りにどのような影響を与えていると思われますか?

僕は自己中心的人間じゃないから、自分の個人的な経験や感情を音楽に込めて皆に聴いてもらうのは好きじゃないな。いまのところ僕が書いた曲の中に個人的な生活や感情に関わるものはない。そうした事を考慮に入れられる時間を与えられたとしても、多分しないんじゃないかな。もちろん、経験や感情はいくつかの物事に触れてしまうものだけど。でも僕は現れて来たものを書き出すんだ。もちろんこれは物事それ自体ではないし、僕個人がどんなかということでもない。ゴシップ好きの人にはがっかりさせちゃうけどね。

そうですね、ではあなた方のバンドと会社との関係や運営方法についてお伺いします。インデーズのとして、音楽産業の趣向とバンドの音楽性とをどのように折り合いをつけようと思いましたか?また音楽産業と人々の好みはあなたの創作活動に影響はありましたか?

僕らはパフォーマンスを管理してくれる会社と契約したんだ。だから彼らは僕らのために出演契約をしてくれたりしてくれていて、それに身の回りの仕事とかもしてくれる。曲は僕ら自身でやっているけど、会社はそれについても協力してくれる。他にも友人達が無償で僕たちを助けてくれるんだ。

音楽産業と僕らの関係については答えるすべがないな。基本的にロックミュージック市場がまだないんだ。もしも一曲が一万枚も売れたら金賞ものだけど、パフォーマンスでいくらかは稼げるけれど、代価としては全然不釣り合いなのさ。巨大な市場にアピールするにはその好みに無理矢理合わせるしかないね。仮にそんなことをしなければならないとしたら、音楽をつくる意味なんてあるかな?お金を稼ぐ方法なんて他にも沢山ある。だから、僕は音楽市場や大勢の人がどんなのを聴きたがっているかなんて気にもかけないんだ。まさに君がどんな音楽が好きかとかね。僕は全力で自分がすべき事をして、演じるべき役に扮すればそれでいいんだ。

EXIT A (The band)
Vocals/Arranger:曹陽(Cao Yang)
Bassist:陳勁(Chen Jing)
Guitarist:楊坦(Yang Dan)
Guitarist:王鈺棋(Wang Yuqi)
Drums:達子(Da Zi)

Text: Ralph Yuu
Translation: Nozomi Suzuki

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
MoMA STORE