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マルタン・マルジェラのインテリア展

HAPPENINGText: Kana Sunayama

そして最後の間はダイニング。白いコットン生地で覆われた椅子とテーブル、整然と並べられたお皿やカトラリー、 溶けかけの蠟燭、白い紙玉が散らばる床など、他の部屋にもみられた要素を再度発見する。しかし何よりもここで圧巻なのは、どこまでもこのアパルトモンが扉をどんどん開けていけば続いていくような錯覚をおこさせる、白とグレイそして光の効果が素晴らしいトロンプルイユの壁紙だ。完璧なように一瞬見えて、わざと完璧には刷られていないこの壁紙は、ダイニング空間に不思議な遠近感を漂わさせる。

マルタン・マルジェラのインテリア展
Photo: Courtesy of Cité de l’architecture et du patrimoine, Paris. © Marie-Pierre Morel pour Elle Décoration

このアパルトモンは予約制で、一般ビジターには週末しか開かれていない。平日はここで貸し切りのパーティーを行うことができる。だからマルジェラの提示した「パーティーのあと」というテーマは、コンセプトだけに留まらず、私たちビジターは実際に昨晩開催されたかもしれないパーティーのあとにいるのだ。大広間に隣接されたトイレは真っ白の壁に四方を囲まれているが、その壁は今までこのアパルトモンで行われたパーティーに参加した者たちの落書きの場にもなっている。ロウの垂れた蠟燭も、そのときどきに使われた跡形なのだ。

古着を再利用してパッチワークのように継ぎ合わせ、別のものとして作り上げられるシャツやドレスのリメイク服、メゾン・マルタン・マルジェラの公式サイト、ここで紹介したインテリア、そして「白」と「時」が複雑に絡み合わされたコンセプト。

マルジェラの生み出す何かに、「終わり」という概念に覆われた完成品はない。それらはひとつのフォルム、ひとつの存在として私たちの目の前で完結はしているが、その瞬間に見せている姿だけなのであり、これからの変遷の可能性をにおわせる。マルジェラの手に触れるものは全て発展途上なのだ。昨日、今日、そして明日。

メゾン・マルタン・マルジェラ ラ・スイート
会期:2008年12月20日(土)〜2009年10月末
会場:Palais de Chaillot
住所:Place du Trocadéro et du 11 Novembre, 75016 Paris
https://www.maisonmargiela.com

Text: Kana Sunayama

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