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マルタン・マルジェラのインテリア展

HAPPENINGText: Kana Sunayama

そこはすっかりメゾン・マルタン・マルジェラの世界だった。住居の顔というべき玄関と第一の間は、豪奢に飾られず、逆に私たちビジターをマルジェラの世界に迎え入れるのに最も適した方法、舞台裏から見せて行く、というコンセプトで作り上げられていたのだ。

マルタン・マルジェラのインテリア展
Photo: Courtesy of Cité de l’architecture et du patrimoine, Paris. © Marie-Pierre Morel pour Elle Décoration

この過程が思い起こさせるものは、マルジェラの白衣。全世界で展開しているブティックの店員たちはもちろん、アトリエで働く従業員もみな白衣を身にまとっている。

またマルジェラは、服にブランド名のラベルを付けるかわりに、長方形の白い木綿の布を縫い付ける。その一切を排除した完璧にニュートラルに思えるラベルは、うなじの下に見える、白い4つの放射線状に縫われた糸によって、逆にメゾン・マルタン・マルジェラの存在をアピールする。隠す、覆う、その行為によって、マルジェラの意図は逆に否応無しに私たちの目につく。

マルジェラにとって「白」とは純粋な本来の白だけではなく、時間の流れによって、手に触れられ、使い古されて、汚れたり黒ずんだりする白も「白」なのだ。

そんなマルジェラの全てを覆い尽くしてしまう「白」と、痕跡によって喚起される「時」に支配された舞台裏を通り抜け、扉を開けて踏み込んだ階上から見る大広間はまた「白」。しかしテラスに面した壁一面のガラス窓から太陽の光が燦々と照り、前の部屋でコットン生地によって映えていた「白」は、ここでは鏡と窓というガラスによってその効果を一層発揮する。

マルタン・マルジェラのインテリア展
Photo: Courtesy of Cité de l’architecture et du patrimoine, Paris. © Marie-Pierre Morel pour Elle Décoration

このアパルトモンのインテリアは、メゾン・マルタン・マルジェラが掲げた「パーティーのあと」というテーマによって成り立っている。

大広間のテーブルにはワイングラスが所狭しと並び、椅子は無造作に重ね上げられている。

この大広間にはマルジェラの「トロンプルイユ/だまし絵」のコンセプトも現れる。一見では気づかないが、白とグレイの木目調の床もフランス風のくり型の天井も壁も、貼付けられた壁紙でしかない。また白い生地に覆われたピアノも生地をめくってしまえば、実物大のピアノのフォルムをしたボール紙なのだ。

天井まで届く壁一面の窓から出入りする広大なテラスには、敷き詰められた人口の白い芝生の上に白いスツールが重ねられ、手すりには使われてロウが垂れた大小の白い蠟燭が並び、パリを一望する。

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