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草間彌生展「クサマトリックス」

HAPPENINGText: Naoko Fukushi

次に向かったのは、黒と黄色の水玉模様に囲まれた回廊だ。入口から道は2つに分かれており、その作品の迫力のせいもあって、最初の一歩に戸惑いを覚えた。水玉模様の壁には半球面の鏡が取り付けられており、歪んだ世界と自分の姿が目の前でどよめく。

そんな空間を当惑しながら通り抜けると、一転、全く違う空間に出る。ここで一番最初に五感を刺激したのは、視覚ではなく嗅覚かもしれない。床には干し草が敷かれ、そのうえに巨大な少女のインスタレーションが置かれていた。

壁には、120種類の少女のドローイング約3000枚が取り付けられ、ゆらゆら揺れていた。このインスタレーションは、これまで通り抜けてきた作品に比べ、暖かみがあり柔らかさを感じる。これは草間彌生が、少女時代にこうありたかったという “夢” を反映したものだそう。

そして最後に、それまで全身を包み込む作品で呼び覚まされた様々な感覚を静めてくれるような、真っ白な壁に施された草間彌生によるシンプルなドローイング。そこには、愛と平和を強く願う草間彌生のメッセージも綴られていた。

草間彌生は『平和へのメッセージを作品を通して伝えたいと思っています。今回、このファッションショーを通して若い人達の情熱を感じました。このような若者達の自由な創造性を大切にしたい。そのためにも平和な世界であり続けなくてはいけません。』と語った。

ファッション、彫刻、絵画、小説と様々な表現方法でクサマワールドを創造する彼女の作品からは、とてつもないエネルギーと生命感を感じる。作品は彼女の胎内から生まれでて来たのだ、私はそう強く感じた。彼女はアートの母だ。

草間彌生展 クサマトリックス
会期:2004年6月5日(土)〜8月22日(日)
時間:9:45〜17:30
会場:芸術の森美術館
住所:北海道札幌市南区芸術の森2丁目75番地
TEL:011-591-0090
https://www.artpark.or.jp

Text: Naoko Fukushi
Photos: Naoko Fukushi

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葛西由香
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