まず最初に「これは電話に分類されるのかコンピューターに分類されるのか？」という疑問が浮かぶだろう。先に述べたようにこの二つの差は少ない。新しいオペレーティング・システム、スマートフォンを発表したビル・ゲイツによると、その違いは単に携帯電話とコンピューターどちらの延長上にあるかによって決まるという。３つのことなる進化に対応した３つのソフトウェアをマイクロソフトが開発しているのは単なる偶然ではない。その動きに合わせ、マイクロソフトはウィンドウズCEとポケットPCを立ち上げた。ウィンドウズCEはプライベートあるいは仕事で使える道具である手のひらサイズコンピュータのオペレーティング・システムで、ポケットPCは手のひらサイズの次世代コンピュータだ。マイクロソフトは最近インテルと携帯電話、PDAプラットフォームの開発で提携を結び、エリクソンやノキアなどが従ったパームのシンビアン・オペレーティングシステムに属するアプリケーションに応戦する。こういったプログラムの増殖は変化の複雑さをあらわす徴候でしかなく、その行き着くところは定かではない。『この種の製品論理がコンピューターと強く結びついているということは明白です。』と、アルカテルの次世代携帯電話開発ディレクター、モーリッツォ・モンターニャは語る。であればこのゲーム、コンピューターのメーカーがアドバンテージを得ていることになる。

Motorola, A388

パーム・サイズコンピューターと携帯電話の数は伸びており、最新モデルはヴァイザー社とハンドスプリング社の次世代コミュニケーターだ。携帯電話の最先端、モトローラは最近ファックス機能、インターネットのアクセス機能、PDAとしての機能を備えた「A388」を発表した。リリースされて数カ月たっているが、アコンプリ社がビジネス市場に向けて製品を出している。シーメンスはアメリカの巨大企業と共同で3gターミナルを開発し、「SX 45」という大きな液晶画面とタッチ・スクリーンを持つパームサイズコンピューターと見た目にも似た商品を提供する。このような携帯電話が一番に狙ったのは映像を表示できることで、これは次世代携帯の必須部分である。ソニー・エリクソンが出した機器の全面が液晶画面になっている新しいパームサイズコンピューター/電話「P800」は、今年後半には市場に出回る予定だ。

Samsung, Nexio S150

ビデオ映像を写し出すこと以外に、第3世代携帯が実現しなければならない主要サービスを明確にする必要がある。『これらの新しいデバイスの実現がこんなに遅れている理由がそこにあります。』と再びモーリッツォ・モンターニャは説明する。『みんな一つのアプリケーションに賭けるのが恐いのです。スタンダードWAPでひどい経験をしましたからね。我々は他に先駆けてそういった携帯電話を作ったのですが、思っていたように市場が反応しなかったので、今回の件ではもっと慎重になっているのです。今回サムソンのブランド名で携帯電話をつくる契約を締結しました。市場が成熟したら我々自身のブランド商品を出します。』
サムソンの第３世代携帯電話はすでに紹介されており、「NEXIO S150」と呼ばれるこの機種はデジタルカメラ、Eブック、MP3プレーヤー機能を備え、現在韓国市場で出回っている。『今回のケースではPCオブジェクトの流行が明らかです。目的、方向性がパームサイズコンピューターに向かっています。』とモンターニャは主張する。

National Semiconductor, Origami (concept design)

携帯電話とPCの究極の境目（パームサイズコンピューターに向う）に存在するデバイスがこの程ナショナル・セミコンダクター社から「コンセプト・デザイン」として公開された。この「オリガミ」という商品は携帯電話とビデオカメラ、PDA、MP3プレーヤー、ウェブブラウザ、電子メール受信プログラムを統合させた。ココム・グループによって開発された非常に斬新なデザインは日本の「おりがみ」を連想させる。カリフォルニアのポーゴ・テクノロジー社の「ポーゴ」もデザイン的な視点からみて卓越した製品。画像・映像を強化したマルチファンクション端末で、大きな四角い液晶画面をはめ込んだ美しいラインを持ったデバイスだ。

電話の進化が全ての機能を一つのデバイスに究極的に統合したものだと言うつもりはない。モトローラのシニア・インダストリアル・デザイナー、マティアス・リヒターが言った『スイス・アーミー・ナイフ的なアプローチはかさばるだけの商品をつくる危険性がある。沢山の機能を有してはいるが、どれも適当な内容になってしまう。それを回避する手段は機能を詰め込むのではなく、ユビキタス・コンピューティングのIT規範に従って別々のコンポーネントとして分離することだ。』少なくとも当初の携帯電話の機能拡張の方向性はエンターテイメント・ディバイスの形態をとると考えられる。