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レン・ハン「ヒューマン・ラブ」展

HAPPENINGText: Victor Moreno

2017年2月24日、中国を代表する写真家レン・ハンが29歳という若さでその命を絶った。スウェーデン・ストックホルムの写真美術館フォトグラフィスカで、彼の個展「ヒューマン・ラブ」がスタートしてから、6日後の出来事だった。その死はインターネットを通して瞬く間に広がり、世界中から哀悼の声が寄せられた。

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Untitled, 2014 © Ren Hang

レン・ハンは1987年、中国東北部の吉林省長春市に生まれ、北京を拠点としながら、性がタブーとされる中国の中で、ヌードを中心とした作品を撮り続けてきた。彫刻的なポーズをとるモデルたちを鮮やかな色彩で写し出した作品の数々は、非合理でコミカルにさえ思える現実の風景を一変させ、観る者に対して人間の存在、そしてその美しさに対する疑問を投げかける。その過激さから常に論争の的となる反面、国内外を問わず多くの人々から愛され、グッチやメゾン・キツネといったファッションブランドのビジュアルや、ヌメロといったファッション誌の表紙も数多く手がけた。

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Untitled, 2012 © Ren Hang

彼はユルゲン・テラーやテリー・リチャードソンと同じくスナップショット的手法を好み、ライアン・マッギンレーのように自然的な表現も用いた。そして他の多くの写真家同様、人間の肌や骨、形、そしてその珍しさや唯一性に魅了されていた。レン・ハンにとって人の身体は、表現からの使者のような存在だったのだ。だからこそ彼は、中国人アーティストの中では大変珍しい“性”、そして“自由”というテーマを探求し続け、その保守的な社会の中で幾度となく逆境に立たされることとなった。

『私は自分自身の作品を、タブーであるとは思っていません。というのも、(作品を撮る際に)文化や政治的な文脈について、あまり考えていないからです。私はただ、自分のしたい/すべきことをしているだけなのです』と、レン・ハンは語っている。

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Untitled, 2012 © Ren Hang

彼はアイ・ウェイウェイやその他多くの中国人アーティストのように、作品に政治的なメッセージやテーマを持たせようとはしていなかった(だがアイ・ウェイウェイはレンを評価しており、彼のキュレーションにより、レンの展覧会が開かれることもあった)。彼の作品において、裸体は何かを明示したり挑発するためのものではなく、ただ自由に対する表現だったからだ。そして一見明示的に見える過激なコンテンツでさえ、文化や政治的な価値観にとらわれていないそのままの人間性を視覚的に表現するという、彼の慎ましやかなアプローチに影響を及ぼすものではなかった。彼は行動主義的というよりは、詩的で抒情的な価値観を重視しており、その作品はシュールであると同時に、とても官能的でもある。レン・ハンは、中国という世界中でもっと保守的な国のひとつで、彼自身のやり方で性と自由を追い求めていたのだ。

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