ザ・ブロード

PLACEText: Nate Risdon

この5年間、ロサンゼルス中心部は重要な変化を受けてきた。景色に点在する新しくモダンな高層ビルだけでなく、交通やレストラン、バー、クラブなどを見ればその変化は一目瞭然である。ロサンゼルス中心部の「再生」は、かつての暗く、不毛で寒々しい景色に、エネルギーと美的価値を与えた。この新しいエネルギーと美的価値を明白に見せるのが現代アート美術館「ザ・ブロード」なのだ。

01 The Broad_photo by Iwan Baan
The Broad, Photo: Iwan Baan

実業家であり慈善家でもあるイーライ&エディス・ブロード夫妻が数十年かけて収集したプライベート・コレクションを展示するために設立した美術館「ザ・ブロード」は、2015年9月20日に一般に公開された。ロサンゼルスの心臓部とも言えるグランドアベニューに位置し、ロサンゼルス現代美術館ウォルト・ディズニー・コンサートホールといった有名な施設の傍である。建築はディラー・スコフィディオ+レンフロ建築事務所ゲンスラーがタッグを組んでデザイン。ブロードは蜂の巣のような“多孔性”のある外壁を持っていて、隣接のぎらぎらした、金属的なウェーブのあるフランク・ゲーリーによるデザインのウォルト・ディズニー・コンサートホールと明確な違いを演出している。約11万平方メートル、1億4,000万ドル(約170億円)の建築にブロードのコレクションである現代アート作品2,000点を収容している。

草間彌生 Kusama_Infinity Mirrored Room
“Infinity Mirrored Room –The Souls of Millions of Light Years Away” Yayoi Kusama, 2013, wood, metal, glass mirrors, plastic, acrylic panel, rubber, LED lighting system, acrylic balls, and water, 2,876.6 x 4,152.9 x 4,152.9mm, Photo: Iwan Baan

中は3階からなる。1階ミュージアムショップ、メインエントランス、ロビー、そして素晴らしいキュレーションによる企画展示のための広い空間がある。1階の作品はこの美術館の中で抜群にダイナミックだ。草間彌生の「Infinity Mirrored Room – The Souls of Millions of Light Years Away」(増殖する部屋)は鏡を並べたインスタレーションで、時々、脈打つように光るLEDの配列が無限に続く部屋を照らしているように見える。一度に入ることを許されるのは1人か2人だけで、部屋のキャパシティも時間も制限されている。このインスタレーションは本当に眩く、希望に満ちた時間が過ぎていく。わずか1分未満の限られた時間で展示を見ることができる来場者は、その非常にわずかな時間で無限ということについてじっくり考えることができるだろう。ちなみに記しておきたいが、来場者は入場するのは無料だが、美術館に入った後は、チケットによって制限時間ごとに分けられる。一般的な美術館の入場のように、チケットは早くさばかれてしまうのでエントランスに入ったら速やかに一枚受け取ることをお勧めする。

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“The Visitors” Ragnar Kjartansson, 2012, nine channel HD video projection

1階で同じくらいインパクトのある作品が、ラグナル・キャルタンソンの9チャンネル・ビデオインスタレーションと村上隆の大きな作品だ。キャルタンソンの映像のポリ面の部屋を囲む9枚のスクリーンには、様々なミュージシャンの映像が映写されている。キャルタンソンは、部屋数の多いマンションの、それぞれ部屋にミュージシャンを呼んだ。彼らは皆、抽象的な同じ楽曲のセッションをしているのだが、普通のアンサンブル・パフォーマンスと異なるのは、ミュージシシャンらがヘッドフォンによる聴覚だけを頼りに、相互セッションしなければならないことだ。

キャルタンソンのインスタレーションはミュージシャンのいるスクリーンの裏でそれぞれの楽器の音の一致を分離させるので、見る者がインスタレーションのどこに立つかによって特定の楽器を独立して聞くことができ、ミュージシャンそれぞれの経験の分離を再現する。結果として生じる経験は、隔離されたという感覚と、さもなければ他から孤立してしまうかもしれない人々をつなげてしまう音楽の能力の驚異の感覚を同時に引き起こす。

青木亮、安藤雅信、村田森、小嶋亜創、奈良美智、小出ナオキ、青島千穂、ガブリエル・オロスコ、ローズマリー・トロッケル
“In the Land of the Dead, Stepping on the Tail of a Rainbow” Takashi Murakami, 2014, acrylic on canvas, 3,000 x 25,000 x 73mm, Photo: Nate Risdon

村上の作品「In the Land of the Dead, Stepping on the Tail of a Rainbow」(死の国に射し込んだ「虹」の尻尾を踏んだ時)はそのスケール感とコンセプトが衝撃的だ。無限とも思える2つの巨大な壁にまたがる作品には、彼の作品に見られる“ディテールの細やかさ”と“モチーフの大胆さ”という対照的な両者が存在し、その緻密な空間に圧倒される。

2階にはブロード夫妻の学術的な研究のための事務所と、展示しきれない現代アートのコレクション作品を収容している。3階はブロード夫妻にとって印象深い現代アート作品を収蔵しており、その作家名を一部挙げるとアンディ・ウォーホルカラ・ウォーカージェフ・クーンズロイ・リヒテンシュタイン、ジャン・ミッシェル・バスキア、バーバラ・クルーガーらが中心となっている。ブロード美術館は、素晴らしい作品群をより深く楽しむために数時間は費やしたい場所の一つだ。現代美術に深い造詣を持たない人々のために、美術館は便利なモバイルアプリやレヴァー・バートンによるナレーションの素晴らしいセルフガイド式の音声ツアーを提供している。

The BROAD
住所:221 S. Grand Avenue, Los Angeles, CA
開館時間:11:00〜20:00(火曜・水曜は17:00まで、日曜は18:00まで)
定休日:月曜日、感謝祭、クリスマス
http://www.thebroad.org

Text: Nate Risdon
Translation: Akari Otomo

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