JR(ジェイアール)× ホセ・パルラ「ザ・ウィンクル・オブ・ザ・シティー:ハバナ・キューバ」展

HAPPENINGText: Yuji Shinfuku

このシリーズの他にもジェイアールはブラジル、インド、カンボジア、アフリカなどの戦争、貧困に苦しめられる女性達を写真に収めた「ウィメン・アー・ヒーローズ」、イスラエル、パレスチナの問題を扱った「フェイス・トゥー・フェイス」などを継続して行っている。どれもポートレイトを拡大し街中にはりつけ、その場所と一体となった表現をしているのだが、圧倒されるのはその写真のサイズで、1枚のポートレイトでなんとビルの10階分程を飲み込んでしまいそうなものさえ存在する。

「ザ・ウィンクル・オブ・ザ・シティー:ハバナ・キューバ」ではそこまでのサイズのものは無いのだが、実物の何倍もの写真を貼るのは一苦労らしくその様子はギャラリー内の一室で放映されている今回のプロジェクトをまとめたドキュメントの映像でも観る事ができる。

%283%29617The_Wrinkles_of_The_City%2C_La_Havana%2C_Luisa_Maria_Miranda_Oliva.jpg
The Wrinkles of the City, Havana Cuba. Luisa Maria Miranda Oliva, 2012. Color print on metallic paper mounted on aluminum 49 1/4 x 74 inches

今回のブライス・ボルコビッツ・ギャラリーでの展覧会はハバナでの2人の共同作品を写真に収めそれをニューヨークのギャラリーで間接的に見せるもので、その本質はハバナのストリートの実物にあると思うが、季節が夏前という事もあってかハバナの雰囲気を感じられる見ごたえのあるものになっている。ギャラリー内には写真以外にもジェイアール、ホセ・パルラによってハバナの壁を再現した作品が1点、ギャラリー横のガソリンスタンドに隣接する外壁にも大きな2人の共同作品が存在する。

%288%29123JR_Parla_mural.jpg
JR / José Parlá, Leda Antonia Machado mural

作品だけで完結するのではなく、その作品のある都市、環境と一体になった表現を目指しているのがここでも感じられる。ギャラリー内のジェイアールによる巨大に拡大されたポートレイト、ホセ・パルラのペインティングと街の環境が一体となった写真を見ているとハバナの街の喧騒さえ聞こえてきそうな気がしてくる。

広告や政治的に意図されたものとは対称的な、匿名の一般人の超巨大ポートレイト。それらが街中に貼られる様は、そういったプロパガンダに対するアンチテーゼであるといえる。社会的に見ればある種イリーガルな事であるが、彼が世界中で行っているアート表現ではそんなあり得ない事が可能になっている。

「ユーズ・アート・トゥー・ターン・ザ・ワールド・インサイド・アウト」(アートを通して世界をひっくり返す)と提唱し、テッド・プライズを受賞したジェイアール。革命的ともいえる彼のアート活動は今日も世界のどこかで進行中である。そんな彼とキューバの血筋を持つホセ・パルラの、歴史、現代社会のエネルギーを秘めたハバナのストリートでの共同作品。「ザ・ウィンクル・オブ・ザ・シティー:ハバナ・キューバ」はブライス・ボルコビッツ・ギャラリーで7月12日まで開かれている。

JR / José Parlá “The Wrinkles of the City: Havana, Cuba”
会期:2013年5月7日(火)〜7月12日(金)
時間:10:00〜18:00(日・月曜日休廊)
会場:Bryce Wolkowitz Gallery
住所:505 West 24th Street, New York, New York 10011
TEL:+1 212 243 8830
https://brycewolkowitz.com

Text: Yuji Shinfuku
Photos: Courtesy of Bryce Wolkowitz Gallery

【ボランティア募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
ボール・ピヤラック
MoMA STORE