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瀬戸内国際芸術祭 2010

HAPPENINGText: Tomohiro Okada

そして男木島へ。男木島は、小さな山がそのまま島になったかのような島。車も入れない、坂が小さな港の集落の中の様々な場所に作品やプロジェクトが存在する。

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フェリーで辿り着くと、歓迎の言葉が綴られた世界の民族の文字が構造を覆うターミナルが迎える。ジェウメ・プレンサによる「男木島の魂」というこの作品は、港湾整備事業による公的な予算によって生まれたもの。瀬戸内の前例である妻有の芸術祭にも共通するとことが、このように地域振興の土木予算をもとに芸術祭ごとに目覚ましい建物が生まれて行く。芸術祭を重ねることで、アートが地域を埋め、魅力的な資源へと変えて行くのが、北川フラムによる「芸術祭」の特徴だ。

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昔の公民館の跡に瀬戸内の風土に触発された大岩オスカールによる一枚絵画「大岩島」が展開している。両面を鏡で繋ぎ、突き抜ける絵画のランドスケープは、実際に目で見てきた瀬戸内の風景に新たなパースペクティブをもたらしてくれる作品であった。(残念ながらこの作品は会期中に生じた島内の火災のために焼失の憂き目にあってしまった)

島内の集落に張り巡らされた細い隘路を歩く。その道の様々な場所に作品が仕掛けられたり、民家に作品が展開する、散策が楽しい展示となっていた。

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空家の大広間に波打つかのような陶器の渦とその上に可憐な陶器の花が散りばめられた高橋治希の「SEA VINE」。高台の大広間、陶器による水のように儚きダイナミックな渦の向こうには、瀬戸内の海が滔々と広がり、織り成す絶景をかたちづくっていた。

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馬小屋や鶏小屋に、竹でつくられた不思議な生物が棲んでいた。松本秋則の「音の風景」、島の竹林で採った竹からつくった様々な音のオブジェが、まるで虫や小動物のように可愛らしく感じられた。

ざっと、作品を観るうちに、丘の上へと出る。その小さな神社からの島々の絶景は、心地よい疲れの到達感と日常と異なる景色の美しさを感じさせ、ふと多くの鑑賞者が立ち止まる。特に目につくのは、外国からの鑑賞者。この芸術祭が開催されている四国は、全国の中で著しく外国人旅行者が少ない地方。まさに見たことの無い新たな日本の絶景、しかし、思い描くであろう美しい伝統と風土から織り成される日本らしい景色は、高い感慨をもたらすのである。

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葛西由香
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