ミン・ウォン展「ライフ・オブ・イミテーション:鏡映」

HAPPENINGText: Rachel Alexis Xu

シンガポール・アート・ミュージアムの青々とした芝生の上。そこに配置されたカラフルでレトロな手描きの広告看板が、日々行き交う人々の注目を集めている。現代的なシンガポールの中心街、その真ん中でまばゆい輝きを放つ過去の断片。これはアーティスト、ミン・ウォンが個展「ライフ・オブ・イミテーション」の中で追求する「アイデンティティ・ポリティクス」というテーマの表現であり、我々への挑発である。

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多様な文化が交錯するシンガポールという都市において、特に若い世代のアイデンティティは明瞭な境界線を引くことが難しい。これは非常に厄介なテーマである。ミン・ウォンはこれに挑戦すべく、ひとつの境界を設定した。1950年代~1960年代のシンガポール映画黄金期を用いて基準を描き、それにより「映画」を文化的、社会的アイデンティティの象徴として掲げたのである。

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第一展示会場では、部屋一帯にガラス製の長いテーブルが設置されており、その中に半券、チラシ、新聞の切り抜きなど、映画にまつわる思い出の品々が大量に封じ込められている。どれも柔らかに変色して、時の流れを感じさせる。50年代~60年代の20年の間に、シンガポールには欧米の映画文化が怒濤のごとく流れ込み、それに合わせてジェンダーや社会という意識が高まっていった。この作品はそんな時代のタイムカプセルなのだ。これ見る者は誰しも、現代と重ね合わせずにはいられないだろう。

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