「折形デザイン研究所の新包結図説」展

HAPPENINGText: mina

東京・青山にある「Shop様方堂」の活動母体でもある折形デザイン研究所が生み出す新しい時代の包結図説、そのはじめての展覧会が2009年11月から12月にかけて十和田市現代美術館で開催された。観光シーズンでないこの時期の動員数としては異例の、1ヶ月で3,000人を越える来訪があり、大きな反響を呼んだ企画展だ。

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折形デザイン研究所・代表の山口さんが古書店で出会ったという、江戸時代中期の有職故事家・伊勢貞丈の著著「包結図説」は、贈り物を包むときのルールや水引の用い方などを説明した“包みの記”と“結びの記”がセットになったもの。格上の方に贈るときに用いる紙の種類、吉凶による水引の色、包むものによって変わる結び方、折りの手順など、変体仮名で贈与のルールと折形の展開図が記されている解説書だ。

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人はなぜ贈るのか? 人はなぜ包むのか? そんな疑問とともに折形の造形美に魅せられた山口さんは、折形デザイン研究所を立ち上げ、折形の研究という現在の活動に至る。十和田市現代美術館での「折形デザイン研究所の新包結図説展」は、折形の背景に潜むその意味性を、折形デザイン研究所の解釈で展示したものだ。なぜ、包みたくなるんだろう。なぜ、結びたくなるんだろう。そういうことを贈与の問題を通して研究してきた、これまでの集大成でもある。

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日本古来の礼法である折形には、実に多くのサインがその幾何学的な造形、紙質、水引の色、結び方、包み方などによって表現されている。誰に何をなぜ贈るのかが、折りの手順を通しても伝えられてきたわけだ。その名残は、吉凶によって包み方や匂い(色合わせ)が異なるというように、現代にも受け継がれている日本の伝統文化でもある。ものの数だけ折形があると言われ、さらにその中には真行草という格が存在し、同じものを包むにも包み方が異なったそうだ。武家の礼法であったことから“切る”ということを極端に嫌い、包むにあたって刃物は使用してはいけないというルールがあったという。それらのルールを守った上で、包むもの、贈る相手、贈る意味によって折形は様々にその形を変え、贈る人の想いを届ける媒介となった。

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