ディアゴナーレ 2009

HAPPENINGText: Daniel Kalt

今年で11年目を迎えるオーストリア映画祭「ディアゴナーレ」は、5日間に渡って国内2番目の都市グラーツで行われ、オーストリアのフィルムメーカー達の注目の的となる。
この映画祭の新総合ディレクター、バーバラ・ピッチラーが公式プレス会議の中で述べたように、2008年はオーストリア映画界にとって非常に良い年となった。これは主に、ステファン・ルゾウィッツキーのドラマ作品「The Counterfeiters(ヒトラーの贋札)」が、2008年アカデミー賞外国語映画賞を受賞したからである。
ゴッツ・スピールマンの「Revanche(復讐)」は翌年2009年の同賞にノミネートされ、惜しくも連続受賞は逃したものの、この国の小さな映画業界の高い可能性を示唆することとなった。その結果としてオーストリア映画界は国際的な注目を集めるのみならず、この国の文化政策のレベルそのものを高めるまでに至った。国内では映画制作のための資本金の低迷が数年にわたり続いており、このアカデミー賞受賞は確実に、文化政策を担う政治家たちにこの国の映画を再認識させることになった。
こうした背景もあって、ディアゴナーレ2009はオーストリア映画の可能性をあらためて強調し、発展させるための重要な映画祭なのである。

Diagonale 2009
ConceptFilm – Dorit Margreiter, Angelo View Drive (Prequel) 2004, C-Print, 80×120 cm, 2/3
© Courtesy: Galerie Krobath Wimmer, Wien

プログラムの内容はとても濃密だ。4つの映画館で237本ものフィルム・ビデオ作品が上映され、様々に分かれた部門が幅広い映画ジャンルを網羅する。この数日間、魅惑的な都市グラーツに集う映画ファンに、国内外の沢山の映画作品が届けられるのである。長編作品から短編作品、ドキュメンタリー、実験映画やアニメーションに加え、2008年からはレトロスペクティブ部門や、オーストリア資本が50%以下の製作費の作品に対する外国映画部門もスタート。そしてもちろん、映画祭に欠かせない授賞式には、総額17万ユーロの価値を超える豪華な賞が用意されており、3月21日の式典で授与される。

Diagonale 2009
KleineFische – Marco Antoniazzi © Novotny Film

上映作品にスポットを当てるならば、まずは映画祭のオープニング作品であるマルコ・アントニアッツィ監督作品「Kleine Fische(小さな魚)」について語るべきであろう。異なる性格を持つ兄弟が、かつて彼らを廃れた魚屋に置き去りにした父親の死をきっかけに、お互いの関係を築き直していく様を描いた興味深い作品である。

Diagonale 2009
Contact High – Michael Glawogger © Luna Filmverleih

既に映画監督としての地位を確立しているミハエル・グラウガーの「コンタクト・ハイ」もまた、高い可能性を秘めた作品である。観客をポーランドへの旅へと連れ出す、奇妙でちょっと現実離れしたロードムービー。美しいクラクフの街や様々な場所で、主人公はおかしな事件に巻き込まれていく。

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