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「ポイント・イースト」アジアの素晴らしい才能を探る

THINGSText: Satomi Gentsu

香港のアート系出版社「ヴィクショナリー」より「Point East」が2008年10月に出版された。
サブタイトルでもある「Explore stunning talents in Asia」が示すように、アジア地域で様々な領域に渡って活動しているアーティストに焦点をあてた内容である。

Point East

本作はこれまでに出版された様々なシリーズ本とは違い、単に作品を紹介するだけではなく、インタビューも数多く掲載し、デザインが具体的にどこでどのように扱われているのかといった、仕事の流れも垣間みれるものとなっている。

ここでは、その中から国別に1組づつ計6組の注目すべき作家を紹介したいと思う。

Point East

ミーウィー・デザイン・アライアンス(中国/北京)
子供の落書き帳の中から飛び出してきた様な突拍子も無いアイディアが遊び心を彷彿させる。
やわらかい色のトーンや手作業のイラストによって体温を感じさせ、気持ちを落ち着かせてくれる。「Sleek Series」は、そういった要素がつまった、無邪気な優しい光が放たれている、アディダス・オリジナルのシューズのカタログだ。

Point East

ス・サンヨン(韓国/ソウル)
どこの角度から観ても平面要素を感じさせる彼の作品は、衣服を使ったグラフィック作品である。ディティールに含まれる細やかな作業が繊細さを際立たせている。その衣服を身に纏った人物はどことなく浮遊感が漂い、屋外を歩く様はどこの国からやってきたのか解らない不思議な存在感を放っているのを感じさせる。

Point East

アナザーマウンテンマン(中国/香港)
赤・白・青のストライプの柄を使った「赤白青」シリーズでは、普段目にしているその3色から着想を得たアイディアを展開している。質感は使い古されたビニールシートのようであり、それぞれの原色に水滴を垂らした様なぼけた色彩。それらがのれんのようにさらに細長く切り取られた物が、円を象った照明という器具に変換される。そして、その照明に光が当たった時に人の会話が聞こえてきそうなカフェ等の憩いの場が想像させられる。

Point East

アサイラム(シンガポール)
彼らの創るものは正に、アイディアの実験現場そのものである。手に取った側、見る側にその結果が委ねられており、そのユーモアの数は計り知れない。瞬時に感じ取る主張というものを感じさせないが故に、受け取る側を考察へと導いてくれるのである。それは果てしなく広がるデザイン実験の旅である。

Point East

オシス(タイ)
リサイクルという環境に配慮された素材が特徴である、エコプロダクト・シリーズを展開している。使用する側が様々な活用法を模索できる様な固定概念から逸脱したデザイン性となっている。リサイクルされた素材を使用しているからであろう、相反する要素が新しい感覚を生み出してくれるものとなっている。

Point East

野田凪(東京/日本)
今年9月7日に急逝していた事が公表され、彼女を知る関係者はもちろん、ファンのみならずデザイン界に衝撃が走った。その彼女の人生はクリエイティブそのもので、常にショッキングなものであったが、彼女の死はさらに衝撃的なニュースであった。
何を手本にしていたかは理解できない、未知の世界。独創的なアイディアとそれを視覚化する表現力は、唯一無二で、世界で通用する数少ない本物のクリエイターの一人であった。
標的を狙い打つ彼女と、的を打たれた観る側のシューティングゲームのように作品が展開される。モノの見方、捉え方を工夫するだけで、こんなにも楽しむ事ができるという気付きをいつも私たちに与えてくれた。

Point East
出版:Viction:ary
仕様:432ページ、210 x 268mm
発売:2008年10月
言語:英語
ISBN:978-988-17327-1-2
価格:US$55.00
https://www.victionary.com

Text: Satomi Gentsu

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