QUZILA(クジラ)展

HAPPENINGText: Tatsuhiko Akutsu

国内組は、長場雄と穴薪ペインティングの2組。長場雄は、1976年東京生まれのイラストレーターで、グラニフのデザイナーとして勤務後、2006年よりフリーランスの活動を行い、イラストレーションだけに留まらず、デザインなどにもその活動の幅を広げている。穴薪ペインティングは2人組のデザイン集団で、「不特定多数の人間に消費されるアートが生産される市場を作る」という目標を掲げ、活動開始以来、数多くの作品をカフェ、ギャラリー、インテリアショップなどで販売し、アート業界に戦略的な革新をもたらそうとしている。

QUZILA展

ジェフが店内の装飾を行った際に余ったテキスタイルや壁紙の上に、2組が自由に自らのアートワークを施していくという形式で作られた作品たち。『大物デザイナーのある意味で「完成された」デザインを、若手アーティストがどのように料理するのだろうか?』という懸念は、作品を見たとたん、脱力感と自然発生的な微笑みで吹っ飛んでしまう。

QUZILA展

「カエル・レインボー」は、60cm×90cmのキャンバスに大きく描かれたゲイの男性の上を、カラフルに染まったカエルたちが列を成して横切っている作品。まず何と言っても、長場雄の「カエル先生」シリーズの可愛さと言ったらない。「まぁ楽にいこうよ」と言わんばかりの優しい表情は、まさに癒し系。そのカエル先生に色を添えるのが、穴薪ペインティングだ。変にコンセプチュアルな作品に纏め上げるのではなく、キャラクターの持つ愛くるしさを損なうこと無く、繊細なタッチと大胆な構図でアーティスティックな要素を付加している。

QUZILA展

「グレートフル・ガエル」では、ジェフのデザインしたくじら柄のパターンの上に例のカエルが、血、ドクロ、墓場など「死」を象徴するモチーフと共に描かれている。その不気味でサイケデリックな可愛さは、「カエル・アディクト」でも垣間見ることができる。「欲」をテーマとしたこの作品では、様々な色をした得体の知れない物体を貪っている大きなカエルが描かれ、『もうお腹いっぱい』と言いたげな顔をしている。確かに「死」とか「欲」とか重厚なテーマで描かれているのは事実だが、最後は結局「可愛い」に行き着いてしまう強迫観念的魅力を持つと同時に、注視してみるとディティールが利いており、芸術的なグラフィックという視点からも楽しむことができる。

カフェにふらっと立ち寄って楽しめる作品という意味では、余計なコンセプトは不必要。おいしいコーヒー、楽しい会話、お気に入りの作家の本、その合間にちょっと楽しめるアートがあれば、他に何も要らないのだ。

サンシャインスタジオ・カフェに展示されている作品は、一部を除いてその場で購入することができる。お家でアートで癒されたい方には「かえるクッション」シリーズがお勧め。クリエーターでなくても、原宿の人混みに疲れたら、夏の暑さに参ってしまったら、冷たいコーヒーと楽しいアートを求めてサンシャインスタジオ・カフェへ。新しいネットワークが見つかるかもしれない。

QUZILA(クジラ)展
会期:2008年6月7日〜7月21日
会場:SunshineStudio CAFE
住所:東京都渋谷区神宮前3-25-12
TEL:03-3401-0071
https://www.sunshinestudio.jp

Text: Tatsuhiko Akutsu
Photos: Tatsuhiko Akutsu

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