第13回学生CGコンテスト

HAPPENINGText: Kyoko Tachibana

毎回日本国内外から寄せられたレベルの高いCG作品が紹介される、第13回学生CGコンテスト。その受賞作品が発表となった。「学生CGコンテスト」は、コンピュータグラフィックス作品を通じて、未来を担う若い才能の発掘と作品発表の場を提供することを目的とし、1995年にCG-ARTS協会主催により始まった。

第13回目となる今回のコンテストは、日本のみならずアメリカやフランス等の海外などからも含め、1,195作品の応募があった。このコンテストでは、デジタルアート、アニメーションをはじめウェブ、ゲーム、インスタレーションなどのインタラクティブアートから、建築、工学のシミュレーションやビジュアライゼーションまでを含めた幅広いジャンルの作品を募集の対象としており、静止画、動画、インタラクティブの3部門に分けて審査される。

今回は、3部門の中でも特にインタラクティブ部門が、応募作品の技術と創造性におけるクオリティーの高さで際立っていた。

インタラクティブ部門最優秀賞を受賞した、慶應義塾大学、関根雅人の作品「ene-geometrix.02」は、熱対流を可視化するために、流体素材、熱源、容器等の実物を使って作られた作品。対流パターンを操作するために必要なGUIを加え、幾度もの実験の後、通常見ることのできない流体の動きを見る側が自由に操ること ができ、この操作によって何パターンもの幾何学模様が生まれる。この作品は、物理現象の持つ美しさとインタラクションの面白さが上手く組み合わされているおり、サイエンスとアートが繰り出す未知なる可能性を提案している点で評価されている。

慶應義塾大学大学院の内田 有映、内藤まみ、平山詩芳、西尾淳志による「Kage no Sekai」では、鑑賞者が自由に置いたり移動したりした実物体にバーチャルな生き物があらわれるという仕組み。おとぎ話にあるような世界を創りだしている、準優勝受賞作品。

公立はこだて未来大学大学院の木塚あゆみ、松本一輝による「torikage」は、人のシルエットを画像認識し、スクリーンに鳥の影が現れ、アニメーションで表現されている。この作品の印象的な部分は、人間のシルエットに合わせて米粒で表現された鳥の影がアニメーションで反応しているところであろう。この作品は佳作を受賞。

同じく佳作を受賞した、情報科学芸術大学院大学の田部井勝作による「邂逅 わくらば」は、一見正方形の枠の中に砂利が詰め込まれているというシンプルなもの。砂利の上を歩くと、その足跡を追従するように砂利が動く仕組み。ダイナミックなインスタレーションではあるものの、日本庭園を思わせる落ち着きもある。インタラクティブ性においては、見せ方が非常にシンプルでありながら、技術力でも優れた作品である。

今年度の学生CGコンテストで受賞したこれらの作品は、コンピューターグラフィックスという分野の可能性がまだ無限にあるという事を示唆しているようである。このコンテストは、今後この分野で活躍しようと考えている学生たちや、そんな未来の才能を獲得しようと心待ちにしているインタラクティブ産業界にとっても良い機会であることは間違いないであろう。

受賞作品は、2月6日より国立新美術館にて展示が開催される。

第13回学生CGコンテスト受賞作品展
会期:2008年2月6日〜17日
会場:国立新美術館
住所:東京都港区六本木7-22-2
TEL:03-3535-3501(CG-ARTS協会「学生CGコンテスト」事務局)
https://www.cgarts.or.jp/scg/2007/

Text: Kyoko Tachibana

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