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「MATZU-MTP」展

HAPPENINGText: Yoshihiro Kanematsu

夏本番の7月28日から8月13まで、ギャラリー・スピーク・フォーで「MATZU-MTP EXPO」が開催された。飛騨高山に生まれ、オレンジカウンティで育ち、現在ニューヨークで暮らすMATZUは、ストリートシーンとコンテンポラリーアートの交点にいる貴重な日本人アーティストだ。1km四方でフューチュラやカウズと出くわすベッドフォードにアトリエを構え、アートの本場でリラックスしながら揺るぎない勝負を続ける彼の、意外ともいうべき東京で初の個展である。

軽やかな色味と可愛らしいモチーフで、老若男女を楽しませる絶妙なアートワークは、一見するだけでも力強い。それでも近寄ってよくよくみれば、好き勝手に塗りたくったアトランダムな文様と細やかな幾何学的縁取りが際立って、一筋縄でいかないコントラストを織り成している。どこで終わるのかわからない、ここに至るまでの大胆な積み重ねと丁寧なそぎ落とし。そこに、十二分にMATZUさんの表現の極みを感じた気がして、ゾクゾクっと鳥肌が立った。

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入り口に入ってすぐにあるのはなんと家だ!奥には不思議に積み重ねられた立体のコラージュ。『空間全体で一つの作品をつくった』という会場は、『何だろう?』とのぞきこんだり離れて見たり、遊び心をくすぐる。そのおもちゃ箱のような家は売られていて、価格は600万円!ギャラリー史上もっとも高価な方の値段設定だそうだ。

MATZUさんもどのアーティストも、誰かにアートを買ってもらって暮らしている。そういうギリギリの勝負を、ずっと続けている。自分の感性に誇りを持って値段をつけることなんて、そんなの当たり前と言われるかもしれないけど、果たして今この東京で、どれだけの人が素直に表現できているだろうか。

MATZUさんがようやく東京で、信頼できる仲間とともに個展を開催したこと。圧倒的なアートワークと包み込むような握手で、語ってくれた一言一言は、きっとぼくたちを優しく突き動かす。アートをめぐって気持ちいい空気が流れた、とても幸せな展覧会だった。

MATZU-MTP EXPO
会期:2006年7月28日〜8月13日
会場:SPEAK FOR
住所:東京都渋谷区猿楽町28-2
https://www.abahouse.co.jp

Text: Yoshihiro Kanematsu
Photos: Kenjiro Nakano

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