川内倫子展

HAPPENING


イギリスの写真好きなら、ここを訪れなければお話にならない。過去にコリーン・ディや、エレイン・コンスタンチンなどのエキシビジョンを扱う、フォトグラファーズギャラリーで、はじめての日本人フォトグラファ−の個展が開催されている。「うたたね」、「花子」などの写真集で知られる川内倫子である。

アクリルにプレスされた、鮮やかな色に迎えられ、エキシビジョンは始まる。そこに写し出されているのは、雷、青葉の上に落ちる水滴、揚羽蝶、海岸線にできる波の跡、光に向かって泳ぐ海亀など、自然の中に彼女の見つけたストーリーが語られているもの。そして、公園のブランコや、花火、階段を駆け上がって行く足、そんな日常の一こまに注目したもの。それらが、時に生と死を、時に対象への愛情を含みながら、川内倫子独特の、清潔感ともいえる爽快感を持って紡がれている。

おそらく、とても丁寧に生きている人なのだと思う。ディテールの上手に描写された小説のように、白いソックスに差し込む光を、花火の燃え尽きた先の灰を、愛しているのだろう、この人は。

エキシビジョンは、スライドショウへと続く。50枚を超える12年に渡るフォトグラファーの私的写真の中には、御盆、お正月、おじいちゃんおばあちゃん、結婚式など、日本人にはありふれた、同時に忘れられないワンシーンが多く盛り込まれていた。よその家のだし巻卵でも、よその家のお父さんの背中でも、日本人ならこれはため息なしには見られない。タイトルにもなっている、「Cui Cui」 という鳥の泣き声や、自然の音のサウンドトラックを聞きながら、懐かしさに震えるような気がした。

ここに写っている日本はロンドナーの目にはどう写っているのだろう。外国人の容易にイメージする日本の姿ではない。消費大国らしからぬ古い民家のつつましいくらしぶり。秩序正しい冠婚葬祭。正面からハグとキスをしあうのではないけれど、それでもじっと大切な人を見つめる愛情表現がそこにある。これが、わたしの産まれた国なのよ、と大切な人に伝えたくなった。そして、素敵な国で育ったものだと、遠い場所からしみじみと感じた。彼女の写真を見て。

川内倫子展「Cui Cui」
会期:2006年5月5日〜7月9日
会場:THE PHOTOGRAPHERS’ GALLERY
住所:8 Great Newport Street, London
http://thephotographersgallery.org.uk

Text and Photos: Sayaka Hirakawa

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