「外泊するサイケ」展

HAPPENINGText: Kat Lo

こういったアイコンは香港の若者には珍しくないけれど、数学の時間に描いた落書きやそれをブログでばらまいたりするのは珍しいかもしれない。

『香港のDIYアートは、未熟だとかごちゃごちゃしていると思われがちだけれど、実際アーティスト達が自宅の地下室でこういったものを作っているところがおもしろい』とサマンサは言う。『香港ではアートの選択枠が狭く価値観も薄い。アートスクールに行った人と、全くアートに興味がない人と二種類に別れている。』エイドリアンによると、香港の莫大な資本は無難なハイファッションやポップカルチャーに注がれているそうだ。だからカポックが存在する意味があるんだとアルノーが付け足す。

高級ブランドとどこにでも手に入るストリートアートとの間で「何か驚くようなもの」を探し出すことができるような場所を提供するのが、カポックの目的だ。サマンサにはもう一つの課題がある。『ここでは誰もがもう特権的なアメリカはごめんだと思っているけれど、結局目にするのはハリウッドものばかりなんです。ヨーロッパの領事館が自国からの面白そうな作品を後援しているように、まずは文化交流の第一歩としてアングラなアメリカの若手のアーティストによる作品を展示することにしたんです。』

ネオン色マーカーで架空の歴史を描いた落書きの数々は、現実と潜在意識、古代神話と21世紀ポップカルチャー、そしてハイアートとストリートアートの間をさまよっている。そしてこれらの作品は、エイドリアン・ウォン制作によるモノクロームの城や虹のインスタレーションとともに展示されている。『こんな馬鹿っぽい難解さを素晴らしいと感じてもらえれば理想的。』と彼は言う。

任天堂で遊ぶのに忙しくてポストパンクについて語る暇などない、というエイドリアンは、絵を見た本能的反応からこのインスタレーションを作った。絵は自由で色彩に溢れ刺激的で現実味があるけれども、単調で平らだ。それを立体的な空間作りで見せようという訳だ。城や虹など幼年期のアイコンを選んでおきながら、わざとトレードマークの色を使わなかったのも彼の目論みか。『絵をかけるには具合がいいオブジェになった。』と彼は言っている。

Sleepover Psychedelia
An Exhibition Curated by Samantha Culp and Adrian Wong
会期:2006年4月1日〜5月5日
会場:Kapok Gallery Space
住所:9 Dragon Road, Tin Hau, Hong Kong
TEL:+852 2549 9254
https://www.ka-pok.com

Text: Kat Lo
Translation: Nem Kienzle
Photos: Kat Lo

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