フォータニアン・オープンスタジオ 2005

PLACEText: Samantha Culp

リーのスタジオ仲間、チョウ・チュン・ファイは遠近法の中心点の欠乏による不安定感を使って、香港の日常風景を描いている。彼は、目が知覚できるほんの微妙な角度を歪めているのにも関わらず、それに邪魔されることなく絵を完成させている。彼のスタイルは、既に学芸員や、バイヤーからも注目を浴びている。一階下に住むローマンとティンヤンのスタジオは一転して、少年時代を思わせる生き生きとした雰囲気がただよっており、漫画、グラフィティーに影響された絵、木製の粗削な動物の彫刻がところ狭しと並んでいる。

ブロックAビルの19階にある「131アートプロジェクト」では、オウ・ホイ・ラムとラム・ワイ・キットが他の総合ビルへと移動する直前の一月まで、4名の女性アーティスト達の展覧会を開いていた。オウは広いカンバスの中に、現実世界との関わりを秘めた抽象画を描いている。(一方では青空が広がり、もう一方ではネジが転がっている)しかし、パステル絵の具から外にでようとする、何か見えない力を彼女の絵から感じ取ることができる。

元スタジオ仲間であるラムは、女性として、旅人として、香港人として、はっきりしない自らのアイデンティティーをレンズにとらえ続けている。彼女のビデオや写真のプロジェクトの多くには、彼女自身が題材として用いられ、時にイタリアやドバイといった外国がロケーションに現れる。生まれついての旅人、ラムは、これからも作品を通して居場所の追求をしていくのだろう。

昨年出版された本「Fotanian 2004」には、19カ所のスタジオと、61名のアーティスト達が収録されているが、彼らのアーティストとしての地位は、近いうち確実に上がっていくだろう。中国大学で教えるオウ・ホイ・ラムは言う。『毎年7月になる度に、火炭で場所を見つけることがとても難しくなる。どうしてかって?それは、その時期に中国大を卒業する生徒達が、こぞって火炭でアートを作る場所を探すからよ。』残念なことに、アーティストが、ギャラリーやショーケース内で寝泊まりすることは禁止されているため(香港目的別地域区分規制)、香港でアートコミュニティーをつくるよりは、マンションやアパートにしてしまうほうが簡単なのかもしれない。

Fotanian Open Studios
住所:15-21 Wong Chuk Yeung Street, Hong Kong
TEL:+852 3529 2360(予約のみ見学可)
https://www.fotanian.com

Text: Samantha Culp
Translation: Mai Kato
Photos: Samantha Culp

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