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セミ・パーマネント 2004

HAPPENINGText: Kentaro Yamada

カナダ生まれでイギリスで育ったというヴィンス・フロストは世界的にも有名なアートディレクターだ。彼はイギリスで「ペンタグラム」の一員として頭角を現し、数々の雑誌のディレクションを経験した。フロスト・デザインとしてイギリスで活動を行っていたのだが、今はオーストラリアに移住してシドニー、メルボルン、ロンドンの3つのエージェンシーの指揮をとっているそうだ。また日本では、ヴォーグ・ジャパンを立ち上げる際1年ほど滞在したそうである。


ヴィンス・フロストと今回の取材を手伝ってくれたサム・ブロディ

非常に気さくな彼は会場外で私たちのインタビューを快く受けてくれた。今は3つのオフィス合同で仕事をしているそうで、アートディレクターとして仕事の分配、他のデザイナーとの仕事など気を使うところは多いものの大旨いい仕事ができているということだった。またクライアントと接する場合に気をつけていることの一つとして仕事のプロセスに透明度を持たせるようにしているそうだ。そうすることによって勘違いなどのミスコミュニケーションもなくなるし、最後にはクライアントも友達として付き合うことができるて新しい仕事を紹介してくれることが多くなると言っていた。

カンファレンスは、全体的にみてハイレベルなグラフィックデザインの仕事の現状を体感することができ、観衆の多くだった学生達も多いに学ぶところがあったと思われる。しかしその一方で、見た目のいいファッショナブルな作品がメインになっており、コンセプトに欠けていても、見た目さえ良ければいいと勘違いさせらなければ良いのだが、とも思わされた。

3年ほど前にシドニーで行われた IdNのカンファレンスに私は参加したのだが、その時に感じられた、時代を変えようとしているパイオニアたちのビジョンといったようなものは、今回のスピーカーたちからはあまり感じなかった。どちらかというと、ハイレベルな職人達と、彼らの仕事にフォーカスされていたと思う。

やはり仕事としてのデザインという所にフォーカスをした場合、アートや科学のカンファレンスと違い、コンセプトやビジョンといったものと同じ位、どれだけクライアントのニーズに応えられるかという面が大きなものとしてあり、それをカンファレンスに来ている観衆に伝えるというのは、なかなか難しかったようだ。

オセアニア地域のデザインは、ヨーロッパ、アメリカに比べて、まだ歴史の浅いところがあるが、ヨーロッパ、アメリカにはないユニークな世界観、発想、影響などがある。またインターネットなどやパーソナルコンピューターの発達によって、情報や技術の格差がなくなってきているので、ここに来ていた学生達のなかから、オセアニア地域を代表するようなパイオニアたちがでてくることを願っている。

Semi-Permanent 2004
会期:2004年4月24日
会場:Bruce Mason Centre
住所:Cnr Hurstmere Road and The Promenade, Takapuna, New Zealand
info@semipermanent.com
https://www.semipermanent.com

Text: Kentaro Yamada
Photos: Kentaro Yamada

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