第3回 ベルリン・ビエンナーレ

HAPPENINGText: Kristy Kagari Sakai

では、残る質問は一つである。「現在のベルリンは、何?」

この質問を答えるよりは、切り開いているのが、マルティン・グロピウス・バウで展示されている世界中から集められたベルリンを特別テーマとし取り上げている多数の雑誌。興味深いのは、各雑誌の編集者が、様々なアイデンティティーをベルリンに与えているところだ。

ある雑誌によれば、クリーンなガラスとスチールの建物と空っぽのままのオフィス・スペースで溢れているベルリンは、モダン・アーキテクチャーを象徴する都市。別の雑誌にとってのベルリンは、ピュアなオルタナティブ・カルチャーを楽しめる残り数少ないアヴァン・ギャルドな都市。金融の世界を東に引っ張ることができるヨーロッパの新しい首都と期待されていたりもする。これらの意見は、大抵つやつやした高質雑誌に写真やイメージとして紹介されており、今年のビエンナーレで提示されている作品は、これらを批判しているようだ。オーラ・ローゼンバーグの偽「勝利の塔」が代表的に思えるが、この場では確かに愉快だった。

他の作品には、トーマス・シュトゥルートが撮るドイツの普通の街路の写真、スティーブン・ウィラッツのベルリン特有のセッティングを研究したビデオとコラージュ、マーク・ルイス、アイザック・ジュリアン、宮本隆司などのビデオ・インスタレーションが含まれていた。

ファッションや洋服も多く、土や汚れがまだついているきっちり折りたたまれたズボンやシャツが並べられたボヤン・シャルチェヴィッチの「Workers’ Favorite Clothes Worn While S/he Worked」、レジーナ・モエラーの色々な情報が書かれた洋服を着たマネキン、微弱な「A Room Of One’s Own」などが提示されていた。

ミカ・ターニラとエルキ・クレニエミの共同制作やマリア・ブスネスの「The Girl Band Project: Chilimango」などを含んでいたソニック・スケープは、とても印象的だったが、多くの大きなショーのように、今回のビエンナーレは、全体的にむらがあった気がしてならなかった。しかし、だからといって成功ではないとは言えないだろう。ベルリンの様な複雑で象徴的な都市を分析すれば、思考は必ず巡りだし、世界が急に大きく見えたりするのである。

第3回ベルリン・ビエンナーレ
会期:2004年2月14日〜4月18日
会場:KunstWerk institute for contemporary art, Martin-gropius-bau, Kino Arsenal
office@berlinbiennale.de
https://www.berlinbiennale.de

Text: Kristy Kagari Sakai
Photos: Kristy Kagari Sakai

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