マイケル・チョン

PEOPLEText: Taka Nakanishi

海外でのこれらの経験から、自分の作品のポジションを確信したマイケルは、香港での展覧会を「ただ人々に鑑賞してもらうだけ」には開きたくなかった、と言う。『今では、香港に「ブーム」を存在させる、ということの意義を自分でも十分に理解したつもりだ。ぼくが選んだファイバーグラスは、芸術作品やプロダクトに使用するには、一般にはコストや技術の面で難しい素材とされている。だけどぼくたちはそれらの問題を中国に行くことで解決した。ぼくたちには、中国というまだまだ秘められた可能性をもつバックグラウンドがあるし、その恩恵をおおいに使うことで、いままで諦めていた作品の制作を実現できるかもしれない。そんな勇気を、芸術を志す若い人にも与えたいと心から思っている。』

実際に3月7日から9日まで開催された「ノー・ピース、ノー・ブーム」展は、短期間にもかかわらず香港の多くの若者が押し寄せ、マイケルを質問攻めにしていた。

今回の個展で、マイケルは木とファイバーグラスをミックスさせた作品=製品を新たに発表した。その作品は「ノー・チャイナ、ノー・ブーム」と名づけられ、今後「チャイナ・ブーム」としてシリーズ化されていくという。かつて、香港には自分の作品の受け皿がないと嘆いていたマイケル。しかし彼は、現状を嘆くことをやめ、作品を作り続けることで後塵を促し、自らポップ・アートという土壌を香港で開拓し、豊穣の地にしようとしているのだ。

なお「ブーム」シリーズは、今展覧会以降、ワンチャイにあるこれも香港の若手作家によるアートシーンをサポートしているインテリアショップ&ギャラリー「Livi」で常設される予定だ。

No peace No Boom Exhibition
会期:2003年3月7日〜9日
会場:Milk Gallery
住所:120 Percival Street, Causeway Bay, Hong Kong
https://www.milk.com.hk

Boom / Institute of Matter
住所:2/F, 33 Yiu Wa Street, Causeway Bay, Hong Kong
https://www.instituteofmatter.com

Text: Taka Nakanishi
Photos: Henry and Kim

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