ピープルズ・ビューロー・トーキョー

PLACEText: Sachiko Kurashina

ザ・デザイナーズ・リパブリックが運営するオンラインショップ「The Peoples Bureau For Consumer Information」の世界で最初のリアルショップ「The Peoples Bureau For Consumer Information Tokyo」(通称 The Peoples Bureau Tokyo)が原宿にオープンした。

以前、SHOP33原宿店があった場所をリニューアルするというかたちでオープンした「The Peoples Bureau Tokyo」。この内装設計を手掛けた Love the Life のお二人に設計に至る経緯やプロジェクトについてお話を伺った。

自己紹介をお願いします。Love the Life としてどのような活動を行っていますか?

1997年に活動を開始。メンバーは勝野明美とヤギタカシの2名。建築デザインと商業施設のアートディレクションを中心に様々なクリエイティブワークを手掛けています。

10月4日に原宿にオープンした「The Peoples Bureau Tokyo」について教えて下さい。Love the Lifeで、このショップの内装を手掛けたそうですが、どのような経緯で、このプロジェクトの参加が決定したのですか?

The Peoples Bureau Tokyo」は、ザ・デザイナーズ・リパブリック(以下DR)が運営するオンラインショップ「The Peoples Bureau For Consumer Information (TPBFCI) 」の世界で最初のリアルショップです。私たちは2002年4月にクライアントである「SHOP33」代表の荒武さんから電話でこのプロジェクトへの参加依頼を受けました。また、私たちは1998年にこの場所で「33hrjk(SHOP33原宿店)」のインテリアデザインを手掛けていました。後でお話しすることになると思いますが、このショップの立地条件はとても特殊なものだったので、リニューアルにあたって荒武さんが「33hrjk」と同じ設計・施工チームで臨もうと考えたのは自然な成りゆきだったと言えるでしょう。

DRのプロジェクト参加が決定した時の気持ちを一言で表すと、何になるでしょうか?

サインもらわなきゃ!

DRのイアン・アンダーソン氏からは「“TPBFCI”のカラースキームをそのまま空間に転用する」というテーマを与えられたそうですが、この課題はどのようにこなされましたか?

最初にアンダーソン氏が話したアイディアは、「TPBFCI」のウェブ画面通りに空間を上部からレッド、ホワイト、グレーの3色に塗り分けたい、と言うものでした。また、ウェブでは要所を際立たせるためのカラーとしてピンクが用いられていますが、これに対応して彼は一部の柱や梁を蛍光ピンクにペイントしたいと考えました。つまりこの時点で空間デザインにあたっての基本的な要素は全てアンダーソン氏から提示されていたわけです。

こうしたアイディアは実にDRらしくシンプルかつ強固なもので、バーチャルな空間のリアルな空間への転用という逆転劇を演出することは私たちにとって実にエキサイティングな課題でした。しかし、私たちはそれらのアイディアを単なるデコレーションとしてではなくアーキテクチュラルなデザインとして実現するためにもうひとつの重要なアイディアを付け加える必要があることに気付いていました。

「TPBFCI」のウェブ画面では最上部のレッドのエリアがウェブ全体の総目次に、最下段のグレーのエリアが商品画像やデータの表示部分に、そして中段のホワイトのエリアが各商品アイテムをセレクトするための操作部分となっています。ここでのカラーリングは決して表装的なものではなく、購買客がより直感的なショッピングを行うための無言の(しかし強力な)指標となっているのです。私たちは「TPBFCI」のウェブに仕掛けられたこうした体験をそのものを何らかのかたちで空間に転用したいと考えました。


Photo by Love the Life

エントランスの短い階段を上って「The Peoples Bureau Tokyo」に足を踏み入れると、フロア中央を白く発光する高さ200mm x 幅400mmの段差が横切っています。このホワイトのラインはペイントの塗分けとして壁や天井に延長されて店内を一周することによって空間を2分しています。そしてホワイトのラインの手前側は床、壁、天井が全面グレーに、向こう側はレッドにペイントされています。このゾーニングによってグレーのエリアは主に商品陳列を担うかたちとなり、スタッフカウンターのあるレッドのエリアはショップ全体のガイダンス機能を担うことになるわけですが、これらはさほど厳密に決定付けられたものではありません。ここで最も重要なのは最初に説明したホワイトのエリアです。何しろこのショップでは床に横たわった厄介な障害物を乗り越える、または跨ぐなどの行為無しにショッピングを済ませることは不可能なのです。

こうした仕掛けは一種の悪戯のようなものではありますが、購買客とショップとの間に積極的な関係性を生みだすための最もローテクで空間的な手立てであると言えます。ハイテクな装置と映像やサウンドを用いてウェブに近いインタラクティヴィティを実現するようなやり方も有り得るとは思いますが、DRのショップにはむしろこうしたシンプルな手法の方が相応しいのではないでしょうか。それに(幸いなことに)そこまでの贅沢が許されるような予算はありませんでした。

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