チェルシー

PLACEText: Rei Inamoto

ある晴れた土曜日にマンハッタンのアップタウンで飲茶を食べていると、友達から電話がかかってきた。午後は特に予定がなかったので、彼と待ち合わせてチェルシーのギャラリーめぐりをすることにした。彼のおかげで、土曜の午後は、かなり実りあるものとなった。

ギャラリーといえば、ソーホーを思い浮かべる人も多いだろう。実際、ソーホーには多くのギャラリーがあるが、この頃のソーホーは、旅行者でごった返していて全てが商業主義になってしまっているように思う。ギャラリーに作品を見に行くというよりは、ショッピングをしに行く人の方が多いようだ。

チェルシーの10番街から11番街(アベニュー)にかけての、22丁目から26丁目(ストリート)周辺には、クオリティーの高いギャラリーが立ち並んでいる。DIAアートセンターがある22丁目は、倉庫を改装したギャラリーが並び、アーティストの作品を有名無名問わず展示している。

現在、DIAアートセンターでは、 あまり知られていないが、非常に魅力的なロバート・アーウィンのインスタレーションを展示している。ビルの1フロアーが、半透明のスクリーンによって 16くらいの正方形に分けられ、セルロイドペーパーで色付けされた白熱電球が垂直に置かれている。ぼんやりと照らされた空間は、別世界にいるかのような、不思議な感覚を与える。

24丁目のガゴシアン・ギャラリーでは、美術の教科書で良く目にするドイツ人アーティスト、アンゼルム・キーファーの作品を展示していた。ギャラリーのある部屋では、巨大な球体が太い鎖で天井からつり下げられていて、離れて観るとがらくたの塊のように見える球体が、近くで見ると産業連鎖の足跡を表すミニチュアワールドのようにも見える。この作品のような、予想もしなかったものを見た時には、強烈な印象が残るものだ。

チェルシーを訪れた時に発見する素晴らしいアート作品以上に、マンハッタンから隔離されたこのギャラリーシーンの最も良いところは、観光客がいないこと。どのストリート、ギャラリーにも人がまばらで、リラックスした環境でカルチャーを体験することができる。

Text: Rei Inamoto
Translation: Mayumi Kaneko
Photos: Rei Inamoto

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