KYOTO ART FOR TOMORROW 2019 ー京都府新鋭選抜展ー

HAPPENINGText: Amelia Ijiri


井上裕加里「marginal women 境界人ー」

もう一つの注目すべき映像作品は、井上裕加里の「marginal women ー境界人ー」。本作品は、二つの画面を横断し女性の移住を記録した内容となっている。画面の一つは物語、もう片方は波浪を映しており、それらの下で本棚に本が置かれている。背中合わせになっているモニターでは、福田真知の「私(たち)は、「見る/定着する」を繰り返す。」が展示され、まばたきする瞳と風に舞う葉がそれぞれ映し出されていた。


柞磨祥子「流れ」(部分)

本年の彫刻作品は実に幅広く多様だった。漆作家の柞磨祥子が形づくるなめらかな漆黒の作品たちはメディアをも超越する。今回の作品「流れ」では、トリックアートかのようにティーカップから漆がこぼれ落ちる様を表していた。


大東真也「忘却の追憶」

大東真也は、熱を加えて溶けたコカコーラのガラス瓶をブロック状にした「忘却の追憶」という立体作品を発表した。

中村潤の「結ばれていない端」は黄色い織り糸でつくられた巨大なふわふわしたオブジェ。“do not touch”と書かれたサインがそばに置かれていたのはただの偶然ではないはず。

若林亮の「喪失しうる」は、織り目加工の施された長方形の金属オブジェを引っ掻き線の入った木材に乗せた作品。つつましやかな筆致は、現代にも確かに力強く続く“もの派”を連想させる。

過去の歴史や遺物が集まる京都文化博物館は、京都の豊かな文化財産を保存し伝えていくコミュニティスペースとなっている。また本展では若い作家たちが、漆や日本画などの古典的なメディアを探求し、表現を広げており、同時に、コンピュータアニメーションやホログラムなどの21世紀のテクノロジーをも積極的に取り入れていた。地域の多様な文化を尊重し、取り込み、生み出された力強い作品からはアートや文化の未来を垣間見ることができた。アートがまだ見ぬ方向へ進み発展していくことは約束されている。

KYOTO ART FOR TOMORROW 2019 ー京都府新鋭選抜展ー
会期:2019年1月19日(土)〜2月3日(日)
時間:10:00〜18:00(金曜日は19:30まで)
休館日:月曜日(祝日の場合は開館し翌日に閉館)
会場:京都文化博物館
住所:京都府京都市中京区東片町623−1
TEL:075-222-0888
入場料:大人 500円、大学生 400円、高校生以下無料
https://www.bunpaku.or.jp

Text: Amelia Ijiri
Translation: Hikaru Nakasuji
Photos: Amelia Ijiri

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