SO…SOAP!(ソー・ソープ)

THINGSText: Kanae Tamase

© So...Soap!

香港のセレクトショップやカフェに立ち寄って、ついでにトイレを借りるといつもそこに、あるものがある。100%天然素材で作られた石けん「SO…SOAP!」(ソー・ソープ)だ。シンプルなボトルデザインだが、フォントが力強く、その風貌は一度みるとなぜか記憶に残る。そんなわけで私も「感度の高い店にいつもある石けん」として覚えてしまった。調べてみると、香港で有名なソーシャル・ビジネスの一つであることを知った。

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創設者はベラ・イップという香港の女性。彼女は当時、教育機関での仕事に携わっており、「母親と子どものよりよい関係」について考えるようになった。彼女自身がシングルマザーで、どうすれば働きながら、母として子どもとの時間を確保できるのか。そのためにはフレキシブルに対応できる就業形態を確保しながら、十分な収入を得る事が絶対条件であった。香港の地価は高く、物価も東京並み。ここで女性が子どもを育てながら生き抜いていくことの難しさは想像に易い。

© So...Soap!

彼女は家から近い職場で、環境に優しいビジネスに携わりたかったが、よい出会いが無かった。そこで、石けん作りを独学で学び、20万ドルの銀行融資を受け2008年に自らビジネスを開始したのだ。30ヶ月で融資を全額返済し、シングルマザーが香港で石けんを作り売りして生きていけることを証明した。彼女は地元の、低学歴低収入の女性達にもこのノウハウを共有すべく、彼らを雇用し、現在でも石けんの製造から販売まで、香港の地元女性が担っている。家庭を大切にする、その為に家の近くでフレキシブルな時間帯で働き、収入も確保する。これこそベラが目標とした女性の働き方であった。

© So...Soap!

特色として忘れてはならないのが、環境負荷を徹底して低減していることだろう。有機豆乳メーカーの「オー・ビーン」とパートナーシップを結び、回収された豆乳ボトルを再利用する。もちろんボトル自体も回収して再利用している。また石けんそのものについては、「100%天然素材」を徹底した。天然のグリセリンで肌の乾燥を防ぐ。香りは天然エッセンシャルオイルを使用。人の肌も地球環境もどちらも「傷つきやすい」というのが信念である。

ラインナップは、ボディーソープ(ラベンダー/オレンジジンジャー)、ハンドソープ(ティーツリー)等。実際に使ってみると、すすいでいる間から肌が潤うのを感じるが洗い上がりはさっぱりとしている。気持ちがいいアロマの香りも手伝ってすぐに500mlを使い果たしてしまいそうだ。

「あなたの手が、未来を変えていく」。と謳う彼らがこれからどう発展していくのか、そしてこれに触発されて香港のソーシャル・ビジネスがどのように展開していくのか、注目していたい。

Text: Kanae Tamase

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