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谷口真人個展「アニメ」

HAPPENINGText: Shinobu Ono

そしてこの展示で最も目を引くのが巨大な鏡の作品だ。描かれた少女はほぼ等身大で、同タイプの作品としてはこれまでで最大の規模となる。この作品は3.11の震災直後に制作された。

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『もしかしたら母親に似ているのかもしれない』と作家が語る少女は、今までに無い強さを持ってこちら側に迫ってくる。その儚げで切ない姿に思わず感情移入してしまう。「母」は、全ての人にとって一番最初に対峙する生命である。作家にとって最もプリミティブな生命観が、この作品には投影されているのかもしれない。

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一本の棒の両端にペンをつけ、片方だけを持って描かれた絵。その持たれていない方のペンが描いた、あやふやで不確かなイメージ。対象を認識しようと、繰り返し存在感の抽出を試みる行為が、客観性を持って画面に定着させられている。

例えば俳句のように、言葉の周囲に漂う存在しない空気や世界を感じさせることは、古くからの日本の“共感”の手法だった。作家の作中に存在する現象も、それが直接何かを表すのでは無く、何処かへ繋がっていくものであり何かを連想させるものなのだ。鏡に写る少女のイメージと物質としての絵の具のあいだに、私たちは自己の生命観とその認識についてのヒントを見るかもしれない。

触りたくても触れないイメージを抽出しようとすることの切なさ、私たちが存在を感じることの不思議を、谷口の作品は問いかけ続ける。

谷口真人 個展「アニメ」
会期:2011年4月2日(土)〜14日(木)
営業時間:13:00〜20:00(土・日・祝日 12:00〜19:00)
定休日:月曜日(祝日の場合も休みとなります)
会場:SUNDAY ISSUE
住所:東京都渋谷区渋谷1-17-1 美竹野村ビル2F
TEL : 03-3797-1288
info@sunday-issue.com
https://www.sunday-issue.com

Text: Shinobu Ono
Photos: Yusuke Isobe

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