スジャッキー

PLACEText: Ania Markham

『帽子を作り始めて、もう20年にもなります。初めて作ったのが、スキーに行くのにかぶるものがなかったから。友達とわいわい言いながら作っていたのですが、その時に、ユニークなデザインのものを作れば、広いゲレンデでも、お互いがどこに居るか分かるじゃない!という発想が出て。最初のうちは、古くて太い毛糸を使っていたのですが、ある時、もう着なくなったセーターを使ってみたらどうか。それを暑いお湯で一度煮て、ちょっと変型させてみたらどうか、というアイディアが浮かんだんです。そうやって試行錯誤した後にできあがった帽子には、すごく満足でしたし、周りからの反応もよかった。だから売ってみようかな、と思ったのです。今でも、全ての帽子は私の手作りです。どんなセーターを使うかにもよるので、ひとつとして同じ帽子はありません』。

『もしかしたら私は、編み物作家かもしれません。最初に服を作ったのが18歳の時。ギャラリーの仕事を始めた頃です。そこで、みんなして服をせっせと作っていましたね。洋裁のハウツー本も買って、それを見ながら新作にチャレンジしたり。これは今でも好きなことです。帽子を作り始めてすぐに、この帽子をブランド化していこうと思いました。ある友人が「シュランクスっていう名前がいいんじゃない?」と提案してくれたのですが、私は帽子を作る時に一旦煮て縮んだ(シュランクした)毛糸を使うので、すごくいい名前だなと思いました。100%ウールを使っていた時期もあったんですけどね。シュランクスが始まった頃は、すごくハーレムっぽいな、と思っていました。あと、一目で私の帽子だと分かってほしくて、すごく大きなタグを帽子の一番上に付けていたので、一瞬見ただけでは、表裏に帽子をかぶっていると勘違いされても不思議ではありませんでしたね。それからしばらくして、ロゴの位置は正面に移したので、シュランクという言葉はもっと目立つようになりました。そのうちにだんだんと注目されるようになり、アムステルダムのデザインストア、フローズン・ファウンテンから取り引きの声をかけてもらうようになりました。ここは、私が長い間、写真作品を紹介し、買っていただいていたお店です』。

その人気を、フローズン・ファウンテンとのやりとりの後、確固たるものとしたシュランクス。その後スジャッキーは、イギリス、アイルランド、デンマーク、スウェーデンなどにも商品の輸出を始めた。日本で開催されたオランダのデザインを紹介する展覧会では、展示物のひとつとして並べられたことも。『その後私は、帽子だけではなく、クッションやスカーフなどのアクセサリーの制作も開始しました。今でも使い古した素材をリサイクルして商品を制作しているので、帽子でなくても、それらはシュランクスというブランドの商品です。最近は、輸出量を少し減らして、オランダ国内の市場にフォーカスを当てるようにしています。これは、私の商品は全て手作りなので、大量生産が不可能なこと。それだけじゃなく、私と同じようにもの作りをしてくれる人を探すことも、無理ですしね』。

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