ウィー・ホン・リン × ヤップ・レイ・ビー「ソウジャーン」展

HAPPENINGText: Fann ZJ

グローバル化が進み世界中で情報が共有される中で、圧倒的な量のデータが押し寄せ、常に新しいものや様々な刺激が求められている。新しい場所や空間、習慣を知るには実際に色々な大陸を旅するのが一番だろう。旅は同じことを繰り返す日々を忘れさせてくれる。けれども、家から離れる日々が続くと、新たな不安が生まれてくる。そして飛行機内での「おかえりなさいシンガポールへ」というアナウンスが、そのような不安もいつも緩和してくれるのである。

Sojourn
Sojourn, Yap Lay Bee

ソウジャーン」展は、2012年オリンピック期間中にロンドンで催されたポップアップ・シンガポール・ハウスというイベントでの展示後、シンガポールへと戻ってきた。この共同展覧会では、地学の博士号を持つ有名な陶芸家ウィー・ホン・リンと、都市デザイナーとして働くヤップ・レイ・ビーの二人のシンガポール人が制作した陶磁器と写真が展示されている。

ウィーは自らの意図と経験を形と物体で表現し、ヤップは写真を見る者に形式と空間を二次元の世界の一瞬として見せてくれる。作品が一つの場所に並べられることで、二人の作品に共通するテーマから、スペースの使い方や場所と家の創造についての討論や会話が自然と生まれてくる。

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Sojourn, Leong Teng Wui

ウィーの「ルラン・タウン」は、色付けされた屋根がついた陶磁製の家を集めたものである。チベットへの旅から影響を受け、その建築様式は福建土楼を連想させるものとなっている。細長いドアと小さな窓枠が付いた、こんな見つかりにくい要塞にいったい誰が入るのだろうか。厚い壁と防護された家に潜む集団とはいったいどういう人々なのだろうか。

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Sojourn, Yap Lay Bee

ヤップの白黒写真では、ウィーとは対照的にその壁の内側を見せてくれ、北京やシンガポール、オスロ、ニューヨークといった都市空間を覗き見る事ができる。ウィーの作品の重さを逆転させる開放感を持つヤップの写真を眺めると、壁の向こう側に残る居住者の形跡に気づかされる。形式や光、影によって何気なく毎日見ているものに光が当てられている。そして細部の構造、瞬時に過ぎ去った出来事、人生の一瞬が一枚一枚に写し出されている。

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Sojourn, Yap Lay Bee

二人とも長い期間旅をし、海外で生活している。ソウジャーンは、そのなかで二人が感じたことの証明である。対照的な色使いや、軽さと重さ、用心深さと開放感、蓋つきと蓋なしの容器、過去と現在といった対比、さらに場所や家、空間の概念に光が当てられている。

地球市民という言葉には陳腐さが感じられる。彼らはどこへ行けば新しい状況へすぐに慣れることができるのか。彼にとっても家こそが、今ある感情の源となっているのである。

Sojourn by Yap Lay Bee and Leong Teng Wui
会期:2013年4月4日(木)〜21日(日)
会場:The Arts House
住所:1 Old Parliament Lane, Singapore 179429
TEL:+65 6332 6900e
nquiries@toph.com.sg
https://www.theartshouse.com.sg

Text: Fann ZJ
Translation: Yuki Mine
Photos: Courtesy of the Arts House

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