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「ストリートアート・ウィズアウト・ボーダーズ」展

HAPPENINGText: Mamiko Kawakami

この展示会で私が注目したのが、在ドバイのペルー人グラフィックデザイナー、リス・ラモス・プラドによる「ア・デイ・アフター」。『ア・デイ・アフターは罪の意識とその感情を抑える一方で、証拠は消えないしみの様に永遠に残る事を表現している』とラモスは答える。この心に訴えるアートは、彼女によると「語られないストーリからの1シーン」なのだとか。

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‘A day after’ by Liz Ramos Prado. Courtesy of the artist

ラモスの作品は、女性の美しさ、はかなさ、繊細さ、そして強さを語る事が多い。『人の感情や複雑な人物像を取り上げるのが好き。題材のキャラクターはこの様な考えから形作られる。』と語る。『ドバイでは、グラフィティアートはまだ未発達。場所がプライベートの場に限られているから。』と、ドバイでのグラフィティは公共の場の場合は必ず事前許可がいる事を指摘する。

この南米出身の若い女性アーティストは、自らをストリートアーティストとは思っていないそうだ。彼女にとってのストリートアートとは、アーティストの政治や社会に対する反論などを、人目に付くオープンスペースで違法であろうとも表現する事。『ドバイではそのレベルのものはまだ見た事がないけれど、近い将来出てくるでしょう』と話す。

この3月の展示会の大好評を受け、ギャラリーはその第2弾「ペーパー・アンド・マルチプル」を6月下旬に予定している。予定展示作品の中にはバンクシーの作品10作もある。サイン付きのものもあり、全てがバンクシーのオフィシャル証書「ペストコントロール」付き。

『50人以上が既に予約しているので間違いなく完売する』とギャラリーのキュレーター、エパウドは地元新聞ナショナルのインタビューに自信満々な様子。『バンクシーはとても人気。今とても価値がある。今日バンクシー作品を買って10年後には10倍以上の価値に必ずなるから。』

ナショナルによると、この謎に包まれたストリートアーティストのオリジナル作品はオークションで576,000ドル(4600万円)で売られた事もあり、サイン付きのコピーでも1万ドル(80万円)程だとか。
『サイン付きがどうか、何枚コピーがあるか、またそれが特別話題性があるかどうかで価格はかなり違ってくるでしょう。』とエパウド。また、エパウドによれば地元UAE人コレクター内でもストリートアートはかなりの人気との事。

『今はストリートアートはポップアートの様なもの。』と、エパウドは『クリスティーズでは大きなオークションがあるでしょう。仮にバンクシーが路上にある作品を残しても、その作品はオークションで何百万何千万で売られるのだから。』とその理由を語る。

バンクシーや他アーティストで有名となったストリートアート、そのコンセプトも動機も変わってきているようだ。街中の何メートルも高い壁の一部分よりカンバスの方が楽だからだろうか、バンクシーの答えを聞いてみたい。

The Street Art Without Borders exhibition
会期:2011年3月9日(水)〜4月7日(木)
会場:ProArt Gallery
住所:Palm Strip Mall, First Floor, Opposite Jumeirah Mosque, Dubai
https://www.proartuae.com

Text: Mamiko Kawakami

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