知床 2006 秋

PLACEText: Junya Hirosawa

午前5時、まだ星が残る薄明の空のもと、知床半島斜里町側のウトロ市街を出発する。目の前はオホーツク海。標高0mから一気に738mの知床峠へ車で登っていく。2005年7月14日、日本では、世界自然遺産として3件目の登録となった知床。それまで自然好きの人間しか知らなかった場所の知名度が一気に上がった。

ここで改めて世界自然遺産とは?

正式名称:世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約
目的:顕著で普遍的な価値を有する遺跡や自然地域などを人類全体のための世界の遺産として保護、保存し、国際的な協力及び援助の体制を確立する。

では知床の世界に誇る特徴とは?

・ 冬にやってくる流氷これは世界で最も南にやってくるので珍しい。
・ 海岸の標高0mから約1600mの山頂部までの間に、多様な植生が見られる。
・ 貴重な動植物。ヒグマが世界的にも高密度で生息。シマフクロウ、オオワシ、オジロワシなどの国際的希少種がいる。
・ サケやマスは川〜海〜川と巡り、それらを餌とするワシやクマがいる。
・この例のように海と陸の生態系が密接な結びつきがある。

と極々簡単に説明するとこんな感じなのだが、知床に来る観光客でこうしたことを知っている人はどのくらいなのだろうと、昨年からのブームを見て思う。

ラベンダーや人気の動物園と同じ感覚で看板の前で記念写真を撮ってお土産を買って次の観光地に移動していく。もっとも自然一流、設備二流、サービス三流と言われてきた北海道の観光に、ふってわいたような世界遺産ブームの観光客を受け入れる準備はまだまだできていない。

さて早朝の沿道には鹿の群れが沢山いるのだが、いつもより数が少ない、今日は霜が降り久々の寒さに動きが鈍いのか。カーブを曲がりながら標高を稼ぎ20分程で峠に到着。数百メートル羅臼側に降りて、樹海を見下ろす斜面にでる。辺りは薄い青に包まれている。根室海峡を挟んで国後島の島影がうっすらと見えるが、海峡の上にきれいに雲が並んでいる。

朝日は残念ながら雲の中だ。でも標高1661メートルの羅臼岳に雲はまったく掛かっていない、天気に恵まれた。

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