「八十日間世界一周」展

HAPPENINGText: Sayaka Hirakawa

旅に出たい。旅に出たい。今すぐ旅に出たい。でも、お金がないし、時間もないし、ボーイフレンド/ガールフレンドとのスケジュールも合わない。そんな現代人におすすめの展覧会がロンドンで開かれている。「アラウンド・ザ・ワールド・イン・エイティデイズ」は、1872年に出版されたジュール・ヴェルヌによる同名の物語をベースに、19人の現在はロンドンで活動するも、国籍、人種の異なるアーティストによって構成されている。

日本語訳では、「八十日間世界一周」で知られるこの小説は、約100年前のロンドンで、風変わりな紳士、フィリアス・フォッグが、80日間で世界を一周できなければ、全財産を失うという賭けをするところから始まる。一秒も遅れることのできない、急ぎ足の旅をしながらも、それぞれの国の持つ異なる文化、19世紀の技術の発展、植民地、人種、政治、またツーリズムを身を持って体験する。この小説の持つ様々な要素からインスピレーションを受け、それぞれの作品は作られている。

さらに、この展覧会は、ロンドンのテムズ川をはさんで、北と南に位置する二つのギャラリーで開催されており、観客は、この展示を全て網羅するためには、なんらかの移動手段を用いて、実際にロンドンをトラベルすることとなる。その旅の途中で、フォッグ氏のように、誰かに出会ったり、何かを発見したり、何かを見につけたり、するのかもしれない。

さて、まずはロンドンの南カンバウェルに位置する、サウスロンドン・ギャラリーから旅を始めることにする。


Yinka Shonibare “Man on Unicycle”

まず目に飛び込んでくるのは、自転車に乗って、とんでもなくカラフルな服を着た首のない男の人形。インカ・ショニバレの「マン・オン・ユニサイクル」という作品である。このファブリックがアフリカのパターンでありながら、オランダを起源にするというのだから、19世紀のヨーロッパによるアフリカ大陸の植民地政策にヒントを得ているのだろう。実際、そのなごりは言語や、人種、文化のミックスという形で、現在にも続いている。


Hiraki Sawa “In Hako”

小さな飛行機と、小さな観光客の一群がマグカップより小さなサイズで、家の中を、キッチンの水切りかごをバスタブを旅する、さわひらきのビデオ作品は、不思議でユニークで、ファンタジーの中を旅するような気にさせられる。「箱の中」と名付けられたこの作品は、白い箱に入ったプロジェクターから、4分30秒の映像が流れる。海辺に置かれたドールハウスのシャンデリアが揺れている。そこへ星か雪のようなものがきらきらしながら降ってくる。ちいさな箱の中でも、イマジネーションはどこまでも旅をすることができる。

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