「八十日間世界一周」展
HAPPENINGText: Sayaka Hirakawa
私の旅は、ここからトラファルガースクエア近くにあるICAへと続く。ここが二つ目のギャラリーである。
カンバウェルからトラファルガースクエアへは、12番のベンディバスで一本でいける。そう遠くはない。カンバウェルは大きなアートスクールがあり、おしゃれなアーティストの卵達が、卒製展におわれている。バスはアフロカリビアン、アフリカン地区のエレファントキャスルを通る。ワールドカップのガーナが勝った日だったので、黄色と緑のユニフォームを着た団体がうれしそうにパレードをしている。ロンドン名所のビッグベン、ロンドンアイのふもとのウェストミンスター橋を渡る。
観光客が忙しく写真を撮る姿をここで見ない日はない。いつもと同じバスでも、目をこらしてみると、ロンドンの中でも、それぞれの場所の持つ民族性や文化に気がつく。それはおそらく観光客の見るランドタワーに象徴されるロンドンとは少し違うものになるのだろう。
Mona Hatoma “Map”
ICAのロウワー・ギャラリーのフロアには、世界地図が描かれている。それがいくつもの透明なビー玉でできているのだ。固定されていないビー玉は誰かが蹴飛ばすと簡単に地図の形を変えてしまうけれど。
『地図の中に入ってみてもいいよ。でも転ばないように気をつけて。』といわれ、『何も動かさないようにすればいいのね?』というと、『少しなら大丈夫。』とのこと。
その危うさ、安定感のなさは地理的条件から発する国政、歴史を象徴していると説明されている。けれど、実際に何千個ものビー玉が転がっているフロアを踏まないように、転ばないように、なにも傷つけないように歩く、それは少し、旅をする時の、不安な、緊張のあの一瞬と似ている気がした。
知らない街を、一人で、迷わないように、でも何も見落とさないように歩く時の気持ちに。モナ・ハトゥムの「地図」という作品。
全行程半日の旅。それでも十分に旅をする時の、ポジティブな、何か素敵なことの待っているような気持ちになる。6月24日、25日には、二つのギャラリーを結ぶスペシャルバスが運行するそうなので、80日間の世界一周旅行に、でかけてみるのはどうだろう。
Around the World in Eighty Days
会期:2006年5月24日(水)〜7月16日(日)
会場:ICA & South London Gallery
https://www.southlondongallery.org
Text: Sayaka Hirakawa
Photos: Sayaka Hirakawa