ヨーン・ボック 展「リュッテと男たち」

HAPPENINGText: Yoshito Maeoka

二つ目の部屋で上映されていたのは、このインスタレーションの内容を連想させる「劇映画」と言ってよいだろう。

この35分にわたる劇映画は、少女リュッテとともに男が無作為に被害者の部屋を訪れるところから始まる。彼は強引に被害者を押しのけ部屋に入り、問答無用に押し倒し、被害者を縛り付ける。そして彼は少女に暗にコントロールされながら狂気の実験の準備を始める。恐れ戦く被害者をテーブルの上に縛り付け、実験が初めの山にさしかかると彼は少女を部屋の外に出す。

残忍、そう一言で表しきれないぐらい、彼の実験の実施する様子をフィルムは事細かに追いかける。彼は被害者の歯を抜き、爪を剥ぎ、指をもぎ取り、耳をそぎ落とす。そして被害者の体の一部は、実験道具に掛けられ試行錯誤されるものの、男はいっこうに満足する気配はなく、実験が続く。しかしながら、私には予測不能な一定の規則や存在するかのようだった。あたかもその実験は外で少女が行っていたおままごと遊びにも見える。

恐怖の実験一方では、顔を洗い毛布で身に付いた血を覆い隠し、時折ドアの外で退屈している少女の相手をする。彼は、彼女の前では父親役として、全く違った優しい表情を見せる。

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