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トマム アイスビレッジ

PLACEText: Yurie Hatano

寒さの厳しい冬の北海道の中でも、常に最低気温ランキング上位に位置する占冠村。占冠村トマム地区にアルファリゾート・トマムはある。マイナス20℃を越える程、猛烈に冷え込む日も少なくない。寒さ故の極上の雪質を誇り、全国はもとより世界中からスキーやスノーボード客が集まる人気スポット。ゲレンデのみならず誰もが楽しめる様々なアクティビティ施設があり、あらゆる冬の遊びを網羅できるメガリゾートだ。山岳にそびえ立つ超高層ツインタワーは、あまりにも有名だろうか。

しかし、ここにトマムの寒さでしか成し得ない、研究者と職人の技がつまった幻想的な空間が潜んでいることは、過去あまり知られてこなかった。 実は9年前から展開されていたのだが、今シーズンからより大きく見どころとして取り上げられるようになったというこの空間、氷のドームが立ち並ぶアイスビレッジに足を運んだ。それも二十四節気で最も寒い「大寒」の日のこと。最も寒い日に最も寒いビレッジへ!


© Tomamu

日もすっかり落ち、冷え込みが一層厳しくなる夕方5時、アイスビレッジはイルミネーションの煌めきに包まれてオープンする。オープン時間を目指して札幌よりJRに揺られることほんの1時間半弱。トマムとは意外にも身近でアクセスしやすい場所にあった。JRトマム駅を降りると、すでにリゾートは目の前に広がり、列車時刻に合わせた無料送迎バスに招かれる。つまり目的のエリア内には、待つことも迷うこともなく、とてもスムーズに足を踏み入れることができるのだ。

この季節、雪氷のアートが群がるフェスティバルが北海道中に数ある中で、このトマムのアイスビレッジにしかない最大の特徴とは一体何か。それはこの小さなビレッジに点在する、大きな氷のドームの独特な建築技法にある。北海道東海大学の教授である粉川牧氏が研究開発した、この厳しい寒さを利用した技法によって、安全で素早く自在な雪氷大型ドームの建築が可能となった。そしてその可能条件を最適に満たした日本唯一とも言えよう土地が、この冷え込みが厳しく日中でもなかなかマイナスの気温を脱しない冬のトマムなのである。

ビニールシートとロープを使って作る巨大風船に、雪と水を吹き付け、氷の壁を成長させるというのが、その独特の技法だ。この方法を利用することで、設営時マイナス10℃を下回る好条件になると、直径15mのドームで2、3日ほどでできあがる。雪山をくり抜いたり、氷のブロックを積み上げる労力とは比べ物にならない。形も目的に応じて自在である。最大では直径30mの大型ドームの制作を過去に成功させているとのことだ。しかも、氷のドームは、かまくらやイグルーと違い、透過性が高いので柔らかな光を帯びた幻想的な空間を出現させることができる。

また、最も重要である“安全性”という面においても、トマムの制作スタッフが発揮する氷育ての勘と技によって、絶対的な強度が保たれていた。気温や吹き付ける雪の条件に慎重に気を使い、0.6という密度を基準に約15cmの厚さに育て上げた壁を保つ、とスタッフが教えてくれる。ドーム表面は昼間の日光を遮るために、適度な雪の膜で覆われていた。どうやら氷は厳しい中に生きる、想像以上にデリケートな“生き物”だった。

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