ビジュアローグ

HAPPENINGText: Erika Saca

『よく水を飲みなさい。きちんとトイレに行きなさい。仕事はほどほどに、子供とよく遊びなさい。よく呼吸をしなさい』 ジョン前田(アメリカ)


ジョン前田による賢明なアドバイス

確かに、彼の言っていることは、正しいが、それがいったい、デザインやメディアとどういう関係があるというのか。ジョン前田は、未来を見越すというタイプの人物ではなかった。レクチャーのタイトルが、それを暗に意味していた。彼は、豆腐ファミリーから、MITのメディアラボという、長い経験から得た知識を分かち合おうとしていた。彼は、自身で楽しみながら、初期の作品から最近の作品、これから手掛ける予定のプロジェクトを見せてくれた。彼は、そのうちの一人は父であるという、自身のヒーローについても語った。


次に発売される予定の新しい出版物を紹介するジョン前田

私は、ある種、暖かみのない、テクノロジーに関する方法論を探る為に、レクチャーに耳を傾けていたが、前田氏はその逆を伝えてくれた。彼の作品とライフスタイルの、暖かい、人間味溢れる面を見ることができた。

ステファン・サグマイスター(オーストリア)は、ニューヨークに、自身のスタジオを持つ、オーストリア出身のグラフィックデザイナーだ。彼の本のカバーや、CD、プリント(彼の題材である体への、手書き文字)などに表現される、ユニークなデザインは、論争を巻き起こし、世界中に名を広めた。


論争の渦を巻き起こした、4A(認定広告代理店協会)のポスター

音楽と映画は人の心を動かすことができるが、グラフィックデザインでそれを成し遂げるのは、なかなか難しい。ザグマイスターは、子供の時に読んだ絵本をはじめ、彼が心動かされたデザインの例を挙げて語った。そして、彼自身が、心を動かそうと思って手掛けた作品を紹介してくれた。『5年から10年後には、グラフィックデザイナーは、人の心に触れることのできるを作る必要に迫られる。』と続けた。


AIGAのポスターでは、サグマイスターはデザインプロジェクトに伴う苦痛を反映すべく、彼はテキストを肌に刻んだ

ザグマイスターは、『コンピューターがあり、必要なプログラムを作ることができるのなら、企業の退屈なデザインには、グラフィックデザイナーは必要ない。しかし、人の心に触れ、聴衆をつかむ。これこそが、本物のグラフィックデザイナーの仕事なのだ』と語る。

会場は暗くなり、深澤直人にだけ、スポットライトが当っていた。ステージはホールの中央に用意され、聴衆はそれを囲む形になっていた。プロダクトデザイナーの深澤直人は、我々を彼のインスピレーションの世界へと案内してくれた。『空間を見つめると、情報が身の回りの環境と解け合い、我々はそれを掴むことができる』と彼は述べる。そして、『そのようにして掴んだ情報は、感情として私たちは理解する。一度、この方法で情報を掴むことができるようになれば、音とノイズが、よい音になるのを感じ取ることができるようになる』と。

『デザインとは、空間の一部だ。』と彼は述べる。『骨組みを包む建築物を、建物の衣服と例えるように、最も素晴らしいデザインは、必ずしもデザインそのものであるとは限らない』と主張する。彼は、現実を切り取りながら、プロダクツを空間の一部となるようにデザインする。

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