ファッション&テキスタイル・ミュージアム

PLACE

鮮やかな色彩をふんだんに使ったデザインで1970年代のグラム・ロック最盛期に活躍したファッション・デザイナー、ザンドラ・ローズ。戦後のファッションとテキスタイルの目まぐるしい移り変わりを記録・紹介することとあらゆる世代の来場者にデザインについて学んでもらうことを目的に「ファッション&テキスタイル・ミュージアム」を設立、2003年5月上旬にオープンした。


本人はショッキングピンクの髪と唇、まぶたに濃いパープルのシャドウを塗り、入れ墨のようにみえる一本眉。今年63歳、小柄で華奢ではあるが強烈なインパクトだ。屋上のペントハウスに住んでいる彼女は、このミュージアムを実現するため、ノッティング・ヒルの自宅を売り払った。総工費は400万ポンドとも500万ポンドもいわれているこのミュージアム、外観も彼女にまけずカラフルで、周辺のクリーム色や茶色、グレーの町並みの間で際立っている。

屋内面積1500㎡の改装を、ローズはメキシコ人建築家リカルド・レゴレッタに依頼した。内部は黒く太い柱など以前の現金問屋の姿を残すが、玄関口部分のショッキングピンクと上品なコバルトブルーを組み合わせたアーチ状の廊下をはじめ、鮮やかな色使いを得意とするレゴレッタが建物の内外観にその色彩感覚を発揮している。彼が手掛けた建物はこのミュージアムがヨーロッパ初登場である。

こけら落としの企画展は「マイ・フェイバレット・ドレス」。ヴィヴィアン・ウェストウッド、ヴァレンティノのベテランからジョン・ガリアーノ、ソフィア・ココサラキ(『聞いたことあって?変わった名前ね』と二人組の上品なおばさま方が囁き合っていた)まで、総勢70名の有名デザイナーがそれぞれお気に入りの一点を提供している。発想の段階から個人的なエピソードまで交えて紹介し、デザイン行程の見えない部分を引き出せたら、というのが狙い。会場内は照明を落として各ドレスにミニライト3点をあて、床に配置されたデザイナーのコメントを読みながら進むようになっている。

ローズ自身のお気に入りは、1974年作の豆緑色のシフォンとサテンのドレス。オーストラリアのエアーズロックから発想を得ている。日没と夜明けの太陽と、ピンクッションと呼ばれる植物をモチーフにしたシフォンのドレープが広がり、えり周りのキルティングを施したサテン布が全体をまとめている。着る者を選ばないデザインで、色違いのものを故ジャックリーヌ・ケネディも愛用していたという。

ドレスの多くは、2000年以降のコレクションから選んだものが多く、各デザイナーがどれだけこの展覧会の意図を理解したのか、その度合が計らずとも分かる結果になった。ここではその中でも選んだ理由が明解なものをピックアップする。

ヴィヴィアン・ウェストウッドのお気に入りは意外に地味で可愛らしい「オン・リバティ」ニットドレス(1994)。手編みの花のモチーフが縫い付けられている。観劇などの気取った装い、友だちとのディナーなどカジュアル用にと、自在に着こなせる。ウェストウッドにとって戦後、ハンドニットや機械編みなどあらゆるニットの方法をとにかく試みた時代を総決算させたのがこのドレスだそう。

2002年オスカー賞で受賞したアメリカ人女優ハリー・ベリーが着用したこのドレスは、「Elie Saab」の秋冬2001/2002コレクションから。豊かなシルクのタフェタ・スカートと繊細な網のチュールトップを組み合わせ、着用者が半着衣半裸体の印象を与えることを狙って作られた。彼女の明るい褐色の肌がドレスの赤ワイン色にぴったり合い、着る者が服を活かした見事な一例である。

今後は年に2、3回企画展を開催する予定。また、ミュージアム内に設置された教育部門は、地元の学齢の子供たち対象にワークショップや休暇中のイベントを開催、また成人には生涯教育を促進していく。自作を収集・展示するだけに留まらず、地元地域の人たちに役立ててもらうこと、またファッション及びテキスタイル学生を支援してミュージアム内での短期アシスタント制度を設けるなど、ザンドラ・ローズが蓄積してきた経験や知識を一般に還元していく。

Fashion and Textile Museum
住所:83 Bermondsey Street, London SE1 3XF, UK
開館時間:11:00~17:45
定休日:日曜
TEL:+44 (0)20 7403 0222
www.ftmlondon.org

Text: Sari Uchida

【ボランティア/プロボノ募集】翻訳・編集ライターを募集中です。詳細はメールでお問い合わせください。
コントワー・デ・コトニエ公式通販サイト | 2016 SUMMER SALE
MoMA STORE