アムステルダム・ウェイステッド

THINGSText: Atsuko Kobayashi

小説家、画家、建築家など世界各国のアーティストの亡命を受け入れてきた歴史を持つ街、アムステルダム。そしてアムステルダムといえば知る人は、「ああ、あれね」とニヤリとしてしまう、ソフトドラッグが解禁になっている街。国境を超えた様々な人種が入り交じり、移民やドラッグといった問題を早くから消化してきている都市だ。

アートやテクノ・クラブ、フリーペーパーやインターネット、ドラッグ、ゲイカルチャーといった文化も、そういった背景から独自の文化が存在している。そんなアムステルダムに生きる若者たちの生活、アンダーグラウンドシーンをテクノサウンドにのせ、デジタル映像で捉えた映画がイアン・ケルコフ監督の「アムステルダム・ウェイステッド」。

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映像全体をドラッグ体験にみたて、XTC、マリファナ、LSD、コカインやSPEEDにいたるまで、主人公たちがドラッグを飲むシーン毎に、見ている側も効いているかのような感覚に陥る特異な映像になっている。
撮影はすべてデジタルレコーディングという手法がとられ、全編を通して流れる疾走するテクノサウンドと合わせて、これまでにないスピード感溢れる映像ができ上がっている。

物語は、アムステルダムに憧れてやってきた若いカップルが、DJ、クラバー、ゲイ、ドラッグディーラーなどアムステルダムに生きる人々と織りなすLOVE&LIFEストーリー。

ドラッグとお金儲けにはまっていく主人公、人気DJを蹴落としスターダムへのし上がっていこうとする女のコ、クラブ通いに夢中の若者たち、自由にセックスライフを送った後真実の恋に気づいていく主人公カップル…… 恋と友情と野望、親や仕事やその先の人生への悩み。誰もが通過するそんな時を、アムステルダム/ドラッグ&テクノというフィルターを通して描かれている、いってみれば“トレインスポッティング・アクステルダム版”だ。

登場人物たちのファッションやインテリアも凝っている。ヒッピー風サイケガールだった主人公のジャクリーヌがクラブファッションにどんどん洗練されていくさまや、DJを目指す女のコ達のアーリー’90サイバーファッション、モード系の黒人ディーラーのスタイル、サイケデリック感覚溢れる部屋やスターDJの洒落たロフト風ルームなど、あらゆるジェネレーションと文化がごちゃ混ぜになった、アムステルダムならではの感覚が描き出されている。

サントラはあらゆるダンス系テクノが使われていて、ドラムンベースやインドバイブ、ハードコア、本場アムステルダムのテクノ、そして俳優たちのセリフも音楽と一体になって映画を盛り上げていっている。

監督はインタビューの中で、『僕の映画はコマーシャルな若いフィルムという形で見せた文化批評だ。一度XTCを味わった子はみなSPEEDまでやるようになるが、最初のエクスタシーは最高だけど最後のSPEEDは最低だという事を描きたかった』と言っている。
自由に簡単にドラッグが手に入る街だからこそ起きてしまう問題、そして魅力が新しい手法で描かれた全く新しいムービーだ。

<ストーリー>
オランダの田舎町から憧れを抱きアムステルダムに移り住んだカップル、ジャクリーヌとマーティン。ジャクリーヌはマジックマッシュルームやソフトドラッグ、パーティーチケットを売る “意識革命の店ガイア” でバイトをするようになり、マーティンは部屋でマリファナ栽培をしながらサッカー、インターネット、ジョイントを愛用、、とそれぞれにアムステルダムでの生活を楽しみ始める。
ある日ジャクリーヌはDJ&シンガーを目指すDDとYOYOに出会い意気投合、バイト先の売り上げを彼女達のレコーディング資金に貸してしまう。同時にドラッグの売人JPと出会い、「簡単に金が稼げる」という言葉から、そして田舎の父親の保釈金、子だくさんの姉、そしてマーティンとの生活のためにハードドラッグの売買をするようになり、徐々にJPとセックス&ドラッグを交えた関係になっていく。日増しに朝帰りの多くなったジャクリーヌにマーティンは腹を立て遂にケンカ、マーティンはアパートを出ていってしまうが、、、。

AMSTERDAM WASTED!
1996年/オランダ/101分・カラー作品
1998年2月6日(金)より渋谷PARCOスペースパート3にてレイトショー
大阪:1998年春 心斎橋シネマ・ドウにて公開
配給:アップリンク(03-5489-0755)

イアン・ケルコフ監督
1964年、南アフリカ生まれ。16歳で大学進学という早熟な少年だったケルコフは反政府運動に参加したかどで徴兵命令を受け、オランダ・アムステルダムに亡命。ネザーランド・フィルム&テレビジョンアカデミーに入学し映画制作を始める。多くのショートフィルムを制作していたケルコフだが、初の長編映画「KYODAI MAKES THE BIG TIME」(92年)がオランダ映画祭最優秀作品賞を受賞。2作目の「THE MOZART BIRD」(93年)もまた最優秀監督賞を受賞した。ケルコフ初期のいずれの作品も、彼の持つ異常性愛や醜悪なものへの興味、殺人、性器、ノイズ、変態性欲など偏執的なダークサイドを映しだしており、国外での上映禁止となった作品もある。97年夏には日本のノイズバンド、メルツバウのドキュメンタリーフィルムを撮影しパフォーマンスも行った(ケルコフは最も影響を受けたアーティストとしてメルツバウの秋田昌美を挙げている)。昨年12月の東京国際映画祭では「TECHNO」(ケン・イシイなど各国のテクノアーティストのドキュメンタリーフィルム)を上映、今作「AMSTERDAM WASTED!」と同様、最近もっとも興味を抱いているテクノ・レイブ・クラブカルチャー&ファッションをモチーフにしたフィルムを制作している。今年夏、日本でイアン・ケルコフ特集上映の企画が予定されている。ルックスはタランティーノ似のワイルドガイ。

Text: Atsuko Kobayashi

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